通常の生活では、腱と輪状靱帯の機械的刺激により生じた炎症は一晩寝れば治
まるが、一晩の間の修復できる範囲を超えたほどの無理を繰り返すことで、徐々に輪状靱帯は肥厚し、腱を締め付けるま
でになる(=狭窄性腱鞘炎)。この結果、腱の一部にシワが寄り、シワは次第に大きくなって結節が生ずる。
結節が輪状靱帯中に収まっているのは指を伸ばした時であって、結節が輪状靱帯をくぐらなければ指は伸びない。指を
屈曲すると腱は腕方向に引っ張られて移動し、結節も輪状靱帯から出た状態になる。そして指を再伸展させようとする
と、結節は輪状靱帯にぶつかり、伸展途中で、それ以上の指伸展が不能となる。バネ指は、中指、環指の指屈筋腱に好発
し、中年女性に多い。
乳小児のバネ指は母指に好発する。小児バネ指はホルモンによるものとされる。幼児のバネはあまり痛がら
ず、自然治癒してゆくケースがほとんどである。
弾撥指の好発指=ボーリングの球に入れる指に一致。
2)症状・所見
指が一定の角度に達すると、自動運動が障害され、これを自動的・他動的に強制屈曲させる
ときには、弾撥性に屈曲する(=バネ現象)。夜間就寝中に、無意識に指を屈曲するせいか、
とくに起床後に指を再伸展させる際に強く痛む。これをモーニングアタックとよぶ。
重度バネ指でなければ、無理に伸展させると、轢音を発し、完全伸展可能になる。
MP関節掌側部の圧痛・運動痛。腫瘤を触知する。
3)整形での治療
軽度のものは自然治癒することも多い。局所にステロイド+局所麻酔剤注射すると9割に効
果ある。治療に頑固に抵抗する者は輪状靱帯の開放手術。
4)鍼灸治療その他
①バネ指の運動療法
障害指の屈筋を中心に、患者の手首を術者の片手で固く握りしめ、その状態で患者に指
を全力で十回~数十回屈伸するよう命じる。すると今まで自力では屈伸できなかった指が、
突然に自力で屈伸できるようになる。
②就寝前の指のテーピング固定(原正之:城北治療院HPより)
腱肥厚部を無理に腱鞘内に入れようとする動作が症状を増悪させている。日中は意識して
この動作を回避しているが、就寝中ではこの動作をしているので就寝前に指を伸ばさないよ
うに、患指の手腹側の3関節を縦走する副子固定ををしておくとよい。
③母指バネ指の鍼灸
母指バネ指では、長母指屈筋腱上に結節ができる。長母指屈筋は前腕骨間膜を起始とし、
母指末節骨に停止する。もし、この筋の筋トーヌスも筋長も生理的範囲内であれば、腱に加
わる伸張力は弱くなり、再伸展の際に、結節が存在したとしても、輪状靱帯にぶつからなく
てすむのではないか、と考えてみると、針灸治療の目標は長母指屈筋の緊張緩和におかれる。
それには列缺から5分~1寸肘方向に上がった処から、長母指屈筋(長母指屈筋腱ではな
い)にむけて斜刺し、母指屈筋の運動針を行なう。目的筋中に刺入したか否かを調べるに
は、置針して母指の屈伸を指示し、その際に針柄が上下に動けば、筋中に入っていること
になる。短母指屈筋は内在筋であり、腱構造をもたない