頻尿の原因
1)生理的頻尿と老化による頻尿 ①精神的ストレス:「膀胱壁がどの程度伸張したら尿意をもよおすか」の閾値が下 がった状態。これを神経性頻尿(神経因性頻尿と区別せよ)とよぶ。 ②バゾプレシン分泌減少:健常者では睡眠を妨げないために、夜間にはバゾプレシン (抗利尿ホルモン。下垂体後葉から分泌)の分泌量が増し、尿生成が減少する。 老人(男女とも)ではこのホルモン分泌低下するので、夜に何度もトイレに行く。 ③エストロゲン分泌低下:エストロゲンには蓄尿作用がある。更年期以降の女性では、 エストロゲン分泌低下するので、蓄尿機能が低下して頻尿になる。 3)その他の疾病としての頻尿 ①炎症性疾患:膀胱炎・尿道炎、前立腺炎などでは、頻尿とともに排尿痛を訴える。 ②神経因性膀胱:脳卒中や脊髄損傷に付随するのもで、鑑別自体は容易である。 ③前立腺腫瘍:頻尿単独症状を訴える。最も多いのは前立腺肥大の第1期で、高齢男 性に多い。前立腺肥大の第1期では、とくに夜間頻尿を訴える。 ④過活動膀胱:尿意切迫感を伴う頻尿 <炎症、頻尿の整理> 炎症3大症状:頻尿、排尿痛、膿尿。○○炎という病名になる。 膀胱炎→排尿終了時痛 尿道炎→排尿開始時痛(湯の中で排尿すると楽) 前立腺炎→会陰部広汎な鈍痛 頻尿3大疾患:炎症、前立腺腫瘍、神経因性膀胱 炎症→頻尿、排尿痛、膿尿という3大症状あり。とくに排尿痛の有無をチェック 前立腺腫瘍→前立腺肥大、前立腺癌。初期は頻尿単独症状。 神経因性膀胱→脳卒中、脊髄損傷など。小便を制御できない。基礎疾患に付随。 例)頻尿患者で、排尿痛(-)、膿尿(-)、中枢神経系の異常がなければ、 前立腫瘍を疑う
尿失禁
1.尿失禁の分類 尿を蓄めている状態で、自分の意に反して尿を漏らすことを尿失禁とよぶ。高齢者の 1/3に尿失禁がある。腹圧性尿失禁(65%)、切迫性尿失禁(20%)、混合型(15%)。 いいえ:切迫性尿失禁 くしゃみ、咳、笑った時など 腹に力が入ると漏れるはい:トイレに間に合わず、いいえ:腹圧性尿失禁 下着を濡らしてしまう はい:混合性尿失禁 2.切迫性尿失禁 1)切迫性尿失禁の概要 ①症状:突然、強い尿意を感じ、トイレに間に合わず漏らす。 ②原因下部尿路刺戟症状(前立腺肥大、膀胱炎、尿道炎)を考える。 過活動膀胱 ③現代医学的治療 a.炎症による知覚性切迫性尿失禁:原疾患の治療のため、抗生物質や消炎剤投与 b.抗コリン剤(副交感神経抑制剤で膀胱収縮力↓させる)が有効。 3.腹圧性尿失禁 1)腹圧性尿失禁の概要 ①症状:りきんだり重い物を持ち上げたり、咳をした際など、腹に力が入ると尿失禁 ②原因:腹圧が、尿道括約筋と骨盤底筋の筋力を上回った場合に生ずる。骨盤底筋 (とくに尿道括約筋と肛門挙筋)の筋力低下症状である。 ※骨盤底筋:尾骨から恥骨にかけハンモック状に張った筋肉の総称。尿道・膣・肛門周囲筋をさ す。四足動物とは異なり、人間は直立歩行するので、骨盤底には負荷がかかる。骨盤下口の 閉鎖はこの負担に耐え、しかも内臓の出口が開くことを可能にしなければならない。 ※無抑制膀胱:一定量は蓄尿できるが、膀胱が時々勝手に収縮する現象。脊髄や脳の障害による