梨状筋症候群
概念 梨状筋の過緊張によりおこる殿部痛を生 じる。さらに緊張した梨状筋により、坐骨 神経が圧迫され、坐骨神経痛を現す病態。 梨状筋:骨盤部深部筋の一つ。 第1~第4仙骨孔を起始とし大転子に停 止。仙骨神経叢支配。股関節外旋作用
症状 梨状筋のトリガーポイントから起こる 関連痛と、梨状筋の圧迫・絞扼による神 経症状に大別できる
1)梨状筋過緊張症状:梨状筋の起始(膀胱兪)と筋腹(坐骨神経ブロック点)にTPs 出現。 殿痛~大腿後部痛となる
2)坐骨神経絞扼症状:坐骨神経痛出現し、梨状筋部の圧痛を押圧すると下肢に坐骨神経痛症状 誘発する。腰痛はない
ヘルニアが神経根障害なのに対し、梨状筋症候群は神経絞扼障害になる。神経絞扼障害 では、神経根症状は出現しない。すなわち筋力低下(-)、下肢腱反射正常であり、デル マトームに一致した神経症状を呈すこともない。SLR テストは、基本的には陰性
先天的に座骨神経が梨状筋を貫ぬいている構造の者が37 %いる。この者が、上述した梨状筋症候群になりやすい。一方、下殿神経が梨状筋を貫いている者が49 %いる。この者は、大殿筋の緊張が生じやすいことが予想できる
後大腿皮神経(坐骨神経の分枝)が梨状筋を貫いている者は30 %いる。この者は、大腿後面の感覚異常(しびれ、痛み)が起こるかもしれない
仰臥位下肢伸展位で、被験者の患足は外旋位傾向。 これは梨状筋あるいはその他の股関節外旋筋群の緊張短縮が原因
神経根症状(-) 椎間板ヘルニアが神経根障害なのに対し、梨状筋症候群は神経絞扼障害になる。神経絞扼 障害では、神経根症状は出現しない。すなわち筋力低下(-)、下肢腱反射正常であり、 デルマトームに一致した神経症状を呈すこともない。SLR テストで異常をみない
梨状筋下孔から出る神経と症状
坐骨神経と後大腿皮神経 梨状筋の直下や梨状筋筋裂中を坐骨神経が縦走する。中には後大腿皮神経が梨状筋を貫く者 もいる。後大腿皮神経の主な支配領域は、大腿後麺と内側面、膝ならびに足背の一部である。 後大腿皮神経からは下殿皮神経と会陰枝も分枝して、大腿内側面と陰嚢の皮膚に分布する。
下殿神経・下殿動静脈 下殿神経が梨状筋を貫いている者もいる。下殿神経は、大殿筋を運動性に支配する。大殿筋 緊張では、下部大殿筋の緊張症状、すなわち殿部中央から坐骨結節付近の重圧感が大殿筋症状 であるが、これをトリガーとする大腿後側の殿溝中心とした疼痛が出現することがある
陰部神経 陰部神経は梨状筋下孔から出た後、再び小坐骨孔から骨盤内に入り、陰部を支配する。 梨状筋過緊張による陰部神経絞扼は、陰部神経症状として骨盤部痛(仙骨部痛、尾骨痛、直腸 肛門痛、括約筋不全、排便障害、下腹部症状)などを生ずることがある