坐骨神経痛
坐骨神経痛による下肢痛では、腰部の大腸兪や殿部の梨状筋部に圧痛点が出現することが多く、 そのまま鍼灸の治療点となる。それに加え、下肢症状部位の圧痛点にも施術することは、広く行 われていることである。坐骨神経または坐骨神経分枝の神経または神経支配筋を 刺激することになる
1)大腿後側:坐骨神経
2)下腿前側:深腓骨神経
3)下腿外側:総腓骨神経、浅腓骨神経
4)下腿後側:脛骨神経
5)下腿内側:脛骨神経
下腿後側症状と下腿内側症状は、ともに脛骨神経症状(神経痛または運動神経支配の筋緊張) を治療している
脊柱管狭窄症
1.病態 脊柱管が狭窄し、神経根・馬尾神経・脊髄が圧迫を受ける病態。下部腰椎レベル(L3~ L4、L4~L 5)に好発するので馬尾神経障害性が多い(脊髄の下端はL2椎体の 高さ)。後天性に脊柱管が圧迫を受ける原因としては、椎間関節の退行性変化、椎間板 ヘルニア、脊椎椎間板症、脊椎辷り症、黄靱帯肥厚などがある。老人男性に多い
2.症状・所見 診断が馬尾性脊柱管狭窄症であっても、神経根部も影響を受けることが多いので、臨床上は ①と②を同時に訴えることが多い
①神経根圧迫 神経根刺激症状が出る。下部腰椎レベルの脊柱管狭窄が多いので、仙骨神経叢か ら出る神経が侵され、とくに坐骨神経(大腿二頭筋、下腿部諸筋)や上殿神経(中 ・小殿筋)のコリや痛みを訴える
②馬尾神経圧迫 機械的圧迫とそれに伴う神経の阻血性変化により、下肢の神経痛とともに神経性の 間欠性跛行が出る(圧迫は軽度なので、運動負荷が少ない場合は間欠性跛行は出現し ない)。10 分間程度歩行し間欠性跛行が出現時、しゃがんで腰を曲げると、脊柱管の 圧迫の程度が弱なるので、症状軽快する
間欠性跛行:安静時や歩行開始時には症状ないが、500 メートル以内の歩行で疼痛や 脱力により、足が前に出にくくなる状態。脊柱管狭窄症性と動脈閉塞性間欠性跛行症 性がある
坐骨神経痛:本症は、体動や歩行で、ただちに痛みが出る。 動脈閉塞性間欠性跛行症:間欠性跛行症状出現時、腰を曲げても直ちに症状改善 せず、数分間の経過が必要。足背動脈拍動(-)、鼠径動脈拍動(+)~(-)。 閉塞性動脈硬化症はASO、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)はTAO と略される
股関節の構造
寛骨臼蓋と大腿骨頭との間に形成される臼状関節である。大腿骨頭と臼蓋の回りを関節包が覆 うように取り囲む。 大転子はローゼル・ネラトン線(45 度股関節屈曲位で上前腸骨棘と坐骨結節を結んだ線) 上にある。大腿骨頭は、スカルパ三角(大腿三角)、すなわち鼡径靱帯、縫工筋、内転筋で囲ま れた部位に位置する。股関節脱臼では、大腿骨頭がスカルパ三角の位置からずれる
寛骨とは、腸骨、坐骨、恥骨が結合したもの。左右1対ある
股関節は臼状関節で、肩関節のような球状関節と比べて、関節窩は深く安定性が高い反面、運動性は低い。 したがって股関節は肩関節に比べて脱臼は起こしにくいが、一旦脱臼を起こすと整復は難しい
股関節運動の主動作筋
①屈曲:主>腸腰筋補>大腿直筋 大腿直筋の起始は下前腸骨、停止は膝蓋骨を経由して脛骨粗面 である。本筋は2関節筋(股関節と膝関節をまたぐ)であり、 股関節屈曲作用と下腿伸展作用を併せもつ。それ以外の四頭筋 の起始は大腿骨にあるので、股関節屈曲作用はない
②伸展:主>大殿筋補>ハムストリング筋 ハムストリング筋とは膝窩に腱をもつ筋の総称で、大腿後側にある。半腱様筋と 半膜様筋は内側腱を、大腿二頭筋は外側腱を構成する
③外転:主>中殿筋補>小殿筋、大腿筋膜張筋側殿部にある筋群。 ④内転:主>長内転筋補>短内転筋、大内転筋、薄筋大腿内側筋群。 ⑤内旋:股関節外転筋と同じ ※歩行の際には、遊脚は少し外転しつつ前方へ繰り出す。外転の際には同時に内旋もする。(尻を振る) ⑥外旋:殿部深筋群(梨状筋、上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋)