2)子宮頚管の狭小
出産経験のない若い女性では子宮頚管が狭いことが多い。このような場合、月経血
を外に出そうとする際、子宮頚部を無理に押し流すようになるので、強い子宮収縮や
子宮痙攣が起こる。
4.月経痛の鍼灸治療
1)治療の考え方
月経時は、自律神経性の痛みと体性神経性の痛みが重複して存在する。上記内臓体
壁反射図では、子宮体部がT h 1 0~T h 1 2、子宮頸部がL3~L4およびS1~S2であることが示されている。T h 1 0~S 2の反応は、交感神経と体性神経を結ぶ交通枝がないので微弱であり、もともと子宮は内臓の中では痛みに鈍感な方に属する。しかし、それで
も月経痛で苦しむのは、T h 1 0以上またはS2以下の脊髄神経の興奮を強いられるから
であろう。
実際には子宮頸平滑筋の収縮によるものが多いので、S2以下の脊髄神経興奮が症状
をもたらしていることが多い。針による月経痛鎮静作用は、子宮収縮の程度を弱めるのではなく、関連痛の鎮痛によるものだとしている。すなわち脊髄神経の興奮緩和が針の治効理由である。ゆえに、陰部神経刺針点・中髎・中極などの刺激が効果的となる。
2)生理痛の皮内針治療
- 圧痛点の調査
月経痛時に出現しやすい圧痛点は、腰陽関(L4L5棘突起間)8 3 %、上仙穴
(L 5 S 1棘突起間)2 2 %、三陰交8 8 %
②皮内針治療
これら3カ所の圧痛点に、次回月経予定日の2~1 4日前から皮内針を貼ると、1 8
名中、著効11名(痛みまったく消失)、軽減6名、無効1名(直後は痛み消失し
たが、3ヶ月後再発)だった。皮内針後に、なお残存する腰腹部の重苦しい感じ
は内臓痛であり、皮内針で速効させるのは困難である。
6.三陰交について
1)三陰交の適応と治効理由
古来から産婦人科症状に対して、三陰交が多用されている。この理由は不明だが、
次のような見解があり、総合すると三陰交は子宮平滑筋(とくに子宮頸部の)を緩め
て血行を良くする効能があるといえそうである。これに対して、逆子矯正で知られる
至陰は、子宮体部平滑筋の緊張を緩める効果があるといえる。
①三陰交がS2デルマトーム上にあることで八髎穴と同じような用途がある。
八髎穴と同様の効果をもつ下肢遠隔治療穴に裏内庭があり、裏内庭は急性食中毒
による下痢・下腹部痛に効果があるとされる。肛門に近い病変ほど症状が激しくな
るので、裏内庭は直腸~下部大腸の病変をカバーする。同じことが三陰交にも言え
て、子宮頸部平滑筋の緊張による痛みに効果
妊娠初期に三陰交刺激が禁忌とするのは、子宮頸部を緩めることで、堕胎につな
がるのではないだろうか。
②三陰交の皮神経支配は伏在神経である。
伏在神経(知覚性)は大腿神経(知覚性・運動性)の枝で、大腿神経は腰神経叢
(L1~L3)からの枝である。腰神経叢からは腸骨下腹神経や腸骨鼡径神経が出
て、鼡径部や下腹部を知覚支配しているので、これらの痛みに有効なことが予想で
きる。