月経随伴症状と鍼灸治療
月経前症候群
月経前緊張症、黄体期症候群、PMSともよぶ。
1.原因
黄体ホルモンは、黄体期(月経前1週間~月経開始直前)に最も多く分泌される。
黄体ホルモンには、体温上昇作用のほかに、きたるべき月経に備えて水分貯留作用
(浮腫)が起こる。水分貯留は電解質の乱れを引き起こし、身体・精神症状が起こる。
2.症状
1)身体症状:特徴的なのは、乳房痛と浮腫
頭痛60%、乳房痛79%、胃腸症状、水分貯留症状(浮腫、体重増加)、顔面紅潮、ニキビ
2)精神症状:いらいら、不安、緊張感、情緒不安定、抑鬱、疲労感、傾眠不眠、嗜好変化
月経困難症
1.月経痛
下腹部不快感、下腹部痛、腰痛や肛門に響く痛み、頭痛。月経開始日やその前日くら
いから始まり、月経終了時まで持続する。
日常生活を妨げない程度の苦痛(多くは月経1~2日目の下腹の鈍痛)は生理的範囲とみなし、
月経困難症とはよばない。
月経痛:下腹痛(痙攣性)82%、腰痛44%
全身症状(50%以上に出現):悪心嘔吐89%、易疲労85%、いらいら67%、下痢60%、
めまい60%、頭痛45%
2.分類(重要)
来院する月経困難症の中から、器質性月経困難症を除外した後に治療を開始する。
機能性(原発性)月経困難症器質性月経困難症
年齢思春期女性20~30才代以上の女性
初経から1~2年以内初経から2~3年以降
痛みの始まり月経直後から開始時期の痛み月経数日前から。または月経と無関係
痛む部位下腹部の疼痛が主体広い範囲の疼痛
付帯症状頭痛・悪心嘔吐・下痢等異常出血や異常帯下
症状の推移成熟とともに軽快年々増悪傾向
痛みの原因子宮頸管の狭小、強い子宮収縮原疾患:子宮筋腫、子宮内膜症
<月経痛に対する判断指針>
はい
思春期~10代女性で月経直後から開始時期の痛みか?→機能性月経痛
いいえ↓
はい
20~30代女性か?→子宮内膜症
いいえ↓
はい
中年女性か?→子宮筋腫・子宮癌
月経は正常→ 卵巣嚢腫、卵巣癌(初期)
月経痛+不妊→ 子宮内膜症
3.原発性月経困難症の痛みの機序
1)過剰なプロスタグランジン産生
黄体期には子宮内膜でプロゲステロンからプロスタグランジン(PG)が産生される。
過剰なPG産生は、子宮筋収縮の過剰→子宮内圧亢進→子宮筋の虚血という悪循
環で月経痛が生ずる。
月経時に見られる嘔気、嘔吐、腰痛、下痢、頭痛などの全身症状はPGとその代謝物質が子宮内に限局せず、体循環に流入することによる。
プロスタグランジン(PG)
細胞や血小板で作られるホルモンの総称で、炎症性疼痛を起こす物質る。PGが胃や食道で増えれば嘔吐に、腸で増えれば下痢に、気管支では咳に、頭部血管が収縮すれば頭痛になる。そして子宮で増えれば強い月経痛となる。
この仕組みから分娩促進剤としても用いられる。アスピリンは、プロスタグランジン合成を阻止することで消炎鎮痛作用をもたらす。(アスピリンがなぜ消炎鎮痛効果をもつのかは、長い間不明だった)