十字靱帯損傷
症状・所見:前十字靱帯損傷は、ジャンプ時の着地や、急激なストップ、ターンなど、非接 触損傷が特徴である。後十字靱帯損傷の頻度は少ない。 損傷時は、激痛と関節内血腫(必発)が起こる。圧痛点は判然としない。前十字靱帯損傷 は、内側側副靱帯損傷に次いで多い疾患。
膝蓋骨軟骨化症
1)病態 ランナー膝(長距離ランニング等によって発生した使いすぎover-use による膝の障害)の 代表的疾患。スポーツをしている十才台の女子に好発。 膝蓋骨の軟骨と、それに対する大腿骨の軟骨が作 る関節を、膝蓋大腿関節という。膝蓋骨の裏面はV 字型に隆起しており、それが大腿骨のV字型の溝を 滑走するが、この時かなり大きな圧力を受ける。(体 重60Kg の人が深くしゃがみ込む場合、膝蓋骨の軟骨 には420kg の圧力が作用する)。 膝蓋骨裏面の軟骨は、日中活動すれば軟骨はやや摩 耗し、夜間就寝中に軟骨は元の状態まで増殖することで恒常性を保つが、膝の過使用でこのバ ランスが崩れ、膝蓋骨裏面にある軟骨が毛ばたつような形になり、軟骨面が凹凸を形成する
2)症状・所見 階段や坂道の特に上るとき、立ち上がるときに起こる膝蓋骨の裏やその周囲の痛み。 膝蓋骨圧迫テスト(+):膝蓋-大腿関節の変形をみるテスト。 膝蓋骨を圧迫しながら、上下左右に動かした際、関節面が 変形してるため、膝蓋骨底の捻髪感(ザラツキ感)を感じ る。多くの場合は、その際に被験者は痛みを感じる。 膝OAのほか、膝関節軟骨化症でも陽性となる。 ※膝蓋骨圧迫テストで、膝蓋骨を下に圧迫した際の、被験者が痛み を感じる機序は明らかではない。大腿膝蓋関節も関節包内にある が、この手技では関節包の直接刺激にも骨膜刺激にもならないからである。 一方、膝蓋骨を上下に動かした場合の痛みは、四頭筋-膝蓋骨-膝蓋腱-脛骨粗面という一連の構造 物の連絡に障害があることを示唆し、これら構造物のつなぎ目に圧痛を多く認める。その障害の主因は 大腿四頭筋の過緊張にあることが多い。大腿四頭筋が緊張することで、膝蓋骨と腱の付着部に慢性的な ストレスが加わり、痛みが生じたと考えられる。←筋腱付着部症
関節水腫
①病理変化 加齢などによって関節表面の軟骨が摩耗し、軟骨表面の辷りが悪くなる →滑膜が炎症を起こし、基準量以上の関節液を分泌→関節液の吸収が追いつかず関節包に 関節液量が増加→関節水腫→水腫により関節包内圧増加→膝関節痛 ※関節液穿刺で水を抜くと、関節包内圧が減るので一時的に痛みは減るが、炎症が改善たわけでないので、 再び水腫となりやすい
②膝蓋跳動テスト(+) 膝関節が腫脹している原因には、水腫と関節包の肥厚がある。 本テストは関節液の貯留の有無をみる。膝上方にある腫脹を下方 に押し下げ、その状態で膝蓋骨をコツコツと指頭で叩く。この時、 水腫があれば膝蓋骨が大腿骨から浮き上がっているので、骨と骨 がぶつかる手応えを感じる
③針灸治療 軽度の関節水腫は針灸治療の対象となり、とくに水腫部を中心 に施灸することで次第に水は引いてくることが多い。しかしそれに は時間がかかるので、整形外科等で水を抜いてもらい、その後に灸 治療をおこなった方が痛み等の関節症状改善が早まる。再度水が溜 まることもなくなる
関節包の肥厚 慢性反復性刺激から関節包を守るため、関節包が肥厚関節包は次第に肥厚してくる。この 結果、柔軟性に乏しくなり、ROM が制限される。膝蓋跳動テスト(-) 関節包の肥厚は、関節裂隙への刺針や筋腱付着部への刺針を行っていると、膝関節可動域が 増し、それとともに自然と関節の病的肥厚もとれてくる