肋間神経痛
1)原因 特発性は比較的若い女性に多く、左側の第5~第9肋間領域に多い。ただし特発性 は少なく大部分は症候性である。症候性の原疾患には糖尿病、脊椎疾患、帯状疱疹、 単純性疱疹、胸部内臓疾患(胸膜炎、自然気胸)などがある
2)肋間神経の走行と神経支配 ①第1~第6肋間神経 肋間を胸骨縁に向かって走行し、 前胸の肋骨に相当する部の肋間部の 筋運動と、深部知覚を支配する。 その皮枝は前胸壁皮膚知覚を支配 する。皮枝には外側皮枝の外側枝と 内側枝、前皮枝の外側枝と内側枝が ある。 ②第7~第12肋間神経 途中までは肋間部を走行するが、 腋窩線あたりから内腹斜筋と腹横筋 の間を走行し、腹白線に至る。 腹壁筋の運動と深部知覚を支配 する。その皮枝は鼡径部を除く腹 壁の知覚を支配する
3)症状 肋間神経が深層から表面に出る部に圧痛がみられ、次の3ヵ所が代表的圧痛点。 ①脊柱点:脊柱外方3㎝の処。胸神経後枝が表層に出る部 ②側胸点(外側点):前腋窩線上前枝の外側皮枝が表層に出る部 ③前胸点(胸骨点):胸骨外方3㎝。前枝の前皮枝が表層に出る部 ※第6肋間神経以下は腹部肋間神経痛として現れ、前胸点に相当する圧痛点は腹直筋外縁に出現し、 「上腹点」と称する
帯状疱疹後肋間神経痛
1)原因 帯状疱疹は水痘ウィルスを病原体とする感染症。水痘ウィルス 感染者の症状(発疹、水疱)消失後、ウィルスが脊髄後根神 経節内に達し、潜伏し続ける(免疫力により活動が抑制)。 数十年後、免疫力が低下した際に再活性化され、水痘ウィル スは神経節から末梢神経を下行して当該皮膚に水疱を形成す る。帯状疱疹は他人への感染はまずないが、水痘に罹患した ことのない小児には水痘として伝染する
2)症状 帯状疱疹(2週間程度で自然治癒する)の治癒後、神経痛様の疼痛で発症。これを とくに「帯状疱疹後神経痛」とよぶ。この痛みはウィルスが知覚神経を侵襲したこと で生ずる。痛みの程度は、数か月続く激烈な痛み(焼けるような、刺されるような) である。肋間神経と三叉神経(1枝領域)に多い。 ※帯状疱疹発症後、約1ヶ月で帯状疱疹後神経痛に移行。移行する比率は、60才で は60%、70才では70%
3)帯状疱疹後神経痛の疼痛機序 帯状疱疹の急性期の痛みは知覚神経の破壊と炎症に由来するが、両者とも低酸素状態をもた らし、悪循環を形成する。また神経破壊は太い神経線維がより強く破壊されるが、神経再生は 細い線維から優位に起こるので、知覚神経組成比率に異常が起こる。 急性期の痛みはウィルスによる神経系に対する直接侵襲と、それに伴う炎症反応に起因する が、これらは交感神経の過緊張による影響も大きい