④第2~第5指バネ指の針灸
MP関節屈曲は虫様筋、PIP関節屈曲は浅指屈筋、DIP関節屈曲は深指屈筋が作用す
る。第2~第5指のバネ指は、浅・深指屈筋腱にできた結節が、両腱共通の輪状靱帯を通過
できない結果である。もし浅・深指屈筋が弛緩・伸張した状態では結節が腱鞘に入らなくても指伸展
が可能となる筈だと考え、郄門と同じ高さの尺側を刺入点とし、浅指屈筋または深刺屈筋中に至る斜
刺を行う。置針した状態で、母指を除く4指の屈伸運動といった運動針を行わせる。
3.ヘバーデン結節
1)病態:手指のDIP関節にみる変形性関節症で、40才以上の女性に多い。原因不明。
RAとの鑑別が重要。語呂:「女は40でへばる(ヘバーデン)」
ブシャール結節:手指のPIP関節にみる変形性関節症。機序はヘバーデン結節と同じ。
2)主症状:単発または多発性に手のDIP関節が変形と疼痛および初期には炎症症状(赤く腫
れる)を伴う。3ヶ月から数年の経過で、変形は残存するが痛みは消失する。
患者の大多数は、変形を問題視しておらず、痛みを軽くしたいと思って来院する。
3)治療:痛みに対し、鎮痛剤内服、テーピングを実施。テーピングは20mm前後の幅の細い
テープをDIP関節周囲にぐるぐる巻き、関節の動きを抑えるようにする。
4)針灸治療:痛みに対し、関節部圧痛点の施灸や刺絡する。ただし鎮痛効果は永続しない
4.母指CM関節症
1)病態
母指の第一中手骨と大菱形骨の間の関節をCM関節とよぶ。母指は他の四指と
向き合ってつまみ動作ができるように、大きな動きのある関節である。
それだけにオーバーユースや老化に伴い、関節軟骨の摩耗が起きやすく変形が
起きやすい。進行すると関節が腫脹したり、亜脱臼することもある。
2)症状
母指の付け根の部分が腫れて出っ張ってくる、押すと痛みが出る、母指を動かしたり力を入
れると痛みが出る。
3)針灸治療
合谷から第1中手骨の内縁に向けて押圧すると、第1中手骨内縁に強い圧痛を認める。
この圧痛方向に対して寸6#2で深刺すると、第1背側骨間筋を貫き母指内転筋に達する。
刺針した状態で母指内転運動(母指を中指側に手掌を擦るように動かす)の運動針を行うと、
鎮痛できることが多い。
<筋・腱炎のパターンと鍼灸治療の法則>
1.筋腱付着部症
胸鎖乳突筋起始部にある完骨穴で、仰臥位にて完骨に置針したまま、顔を左右に回旋させることで胸
鎖乳突筋の緊張を緩め、頸の回旋の可動域を広げることができる。膝関節痛の場合、膝蓋骨内上縁にあ
る内側広筋部(下血海)に置針した状態で膝関節の屈伸を行わせると、内側広筋の筋緊張を緩め、この
部の膝痛を緩和させることができる。テニス肘では上腕骨外側上髁への前腕伸筋群の起始部に刺針し、
手関節の屈伸運動を行わせると、これら筋群の緊張が緩み、肘痛も改善できる。
代表疾患:テニス肘、鵞足炎、アキレス腱付着部炎、オスグッド病、ジャンパー膝
治療手技:針管などを用い、腱の骨付着部にある限局的な圧痛を発見する。数カ所見つかることが多
い。圧痛点から刺針し、抵抗を感じた時点で小刻みに強めに捻鍼し患部に得気を感じさせる。この
際、針先に線維が絡み付く抵抗を感じた場合は、緊張を緩めずにそのまま短い振幅で素早く抜鍼
する(筋線維が切れる感覚を得る)