2.排尿・蓄尿障害を生ずる疾患の概要
腹圧性尿失禁
尿失禁混合性尿失禁
切迫性尿失禁過活動膀胱神経因性膀胱
尿意切迫感非神経因性膀胱
神経因性膀胱
(旧:膀胱不安定症)
頻尿炎症性疾患(膀胱炎、尿道炎、前立腺炎)←排尿痛(+)の疾患
腫瘍(前立腺肥大、前立腺癌) ←初期は頻尿単独。尿意切迫感はない。
3.神経因性膀胱
排尿困難と尿失禁の原因分類は次のようになる。神経因性膀胱とは、排尿・畜尿に関する神
経機能に異常をきたした状態である。
神経機構の障害:神経因性膀胱
神経機構以外の障害排尿困難:前立腺肥大、前立腺癌
尿失禁:尿道括約筋障害
排尿・蓄尿中枢は、上位中枢として延髄、下位中枢として仙髄がある。上位中枢を<親>に、
下位中枢を<子>に例えると、<子>は元気に動き回り、<親>は大人しくしなさい! といった状況
が健全なスタイルといえる。
排尿畜尿中枢上位排尿中枢:延髄←活動時、蓄尿優位<親>
下位排尿中枢:仙髄(S2~S4)←活動時、排尿優位<子>
1)上位中枢障害
下位排尿中枢優位となり排尿亢進(親がいないと子は暴れる)。
脳血管障害や慢性脊髄損傷患者では上位排尿中枢の制御がなくなり、下位排尿反射が活発化
するので排尿亢進となる。
脳の指令が脊髄に伝わらないため、意志による排尿も不可能になり、尿失禁をきたす。尿意
は橋で認識されるので、上位中枢障害では尿意も失われる。この代表疾患には、脳卒中や
脊髄損傷がある。
脊髄損傷者は、尿意を感ぜず失禁するため、膀胱にカテーテルを入れ、袋に尿を溜めている。
2)下位中枢障害
上位排尿中枢優位となり畜尿亢進(子がいないと、親の意見がまかりとおる)。
仙髄反射中枢と、それ以下の末梢神経障害で生じる尿閉、排尿困難。代表疾患は
骨盤内手術(子宮癌、直腸癌)後遺症、糖尿病性末梢神経炎。
4.過活動膀胱
1)概念
過活動膀胱とは、2002年パリで開催された国際尿禁制学会で認められた新しい疾患名である。
健常者は400~500mlを蓄尿できるが、過活動膀胱では、100ml前後の尿がたまると膀胱が収
縮し、尿意をもよおし我慢できなくなる。また過活動膀胱は、膀胱が尿で満杯になる以前に、
膀胱が自分の意思に反して、勝手に収縮し尿失禁をおこす。
2)症状
3大症状は、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁。
尿意切迫感のない頻尿や、腹圧性尿失禁は、過活動膀胱に含めない。
膀胱癌、膀胱結石、膀胱炎などの疾患を除外して診断する。
3)分類
①神経因性過活動膀胱:脳脊髄疾患により、橋排尿中枢をコントロールできなくなり、膀胱に
少量でも尿が畜まると、この排尿中枢が興奮し、膀胱が収縮しやすくなる。
②非神経因性過活動膀胱(旧称:不安定膀胱):下部尿路閉塞(前立腺肥大、膀胱頸部硬化症、
尿道狭窄など)、骨盤底筋群の脆弱化、加齢などの原因による。
4)薬物治療
膀胱収縮をつかさどるアセチルコリンの受容体をブロックし、膀胱の緊張を低下させて
尿意切迫感・頻尿・尿失禁を改善させる目的で、抗コリン剤を使用。