4)鑑別診断
R/O 糖尿病性下痢
糖尿病では全身の神経・血管がやられる。自律神経も障害を起こすので、腸の機能も狂う。
糖尿病性下痢は夜間の下痢が多い。一方、夜間は神経が最も休まるときなので、過敏性腸症候群では夜下痢することはない。
R/O 甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症者の40%は腸管蠕動運動亢進のために下痢する。主症状は心悸亢
進、頻脈(1 0 0~1 2 0 /分)、体温上昇、精神的不安定。
2.吸収不良症候群
1)原因・病態
腸疾患、膵疾患、胆嚢疾患などで、消化酵素分泌不全が生ずる(わが国では手術後
が多い)ことにより、小腸で消化吸収障害が起こる。栄養物質の吸収力が不足するの
で、体重減少や全身倦怠が起こる。
消化酵素分泌低下するので、浸透圧性下痢(小腸内の浸透圧が高まる結果、体液が
腸管内に大量に引っぱられ、多量の水が大腸にいく化学的変化)が出現する。
〈腸の水分処理〉
小腸は1日10çの水を処理している。10çの水が流入(口から3ç・唾液1ç・胃1.5ç・胆汁と膵液1.5ç・腸液3ç)し、一方小腸で9.5çを吸収している。小腸を通過した残り0.5çを、大腸で0.4ç吸収する。大腸での吸収は存外少ない。
2)症状
腸の機械的運動とは無関係→腹痛は、あまり強くない(便意を我慢できる)
下痢は1日1~2回。水様性の下痢にはならない。(代償性に大腸水分吸収増大)
栄養吸収力不足により、体重減少、貧血、浮腫、舌炎(ビタミンB6不足)
3)代表疾患
①胃、小腸切除:吸収部分の減少による下痢
②慢性膵炎、膵臓癌:膵性下痢(膵液分泌低下により、脂肪を分解できず脂肪性下痢)
③乳糖不耐症:牛乳を飲むと下痢する。先天性に二糖類分解酵素であるガランターゼ
不足による。本人が自覚しているので、臨床上はあまり問題にならない。
3.その他の慢性下痢
1)潰瘍性大腸炎:膿粘血便、発熱、右下腹部痛を伴う
2)クローン病:浸透圧性下痢、血便下痢
腸の侵襲部位で、広く浅い→潰瘍性大腸炎、深く狭い→クローン病。
3)大腸ガン:腸管の通過障害。腹痛を伴う。ときに血性下痢
4)腸結核:浸透圧性下痢
便秘
排泄物が長時間腸内に留まり、水分が吸収されて排便困難を伴う状態を便秘とよぶ。
毎日便通があっても苦痛や残便感などの不快感を伴う場合には「便秘」とみなす。
器質性便秘:巨大結腸症、結腸・直腸癌、粘液水腫、脳卒中後遺症
機能性便秘結腸性便秘弛緩性便秘
痙攣性便秘(=過敏性腸症候群の便秘型)
直腸性便秘