2.外耳炎に対する鍼灸治療
外耳炎は細菌感染により起こり、抗生物質投与が効果的。鍼灸に来院することは少ない。
2)外耳炎の反応点と針灸治療
外耳道知覚は、外側が三叉神経第3枝の枝の耳介側頭神経、内側が迷走神経耳介枝による。トリガーポイントは、外耳道(外耳道に指を入れたり、耳介をひっぱると痛む)で、圧痛点は三叉神経第3枝支配である耳介前面(耳門、聴宮、聴会など)に出やすい。ツボ反応は耳孔周囲に出現するので、圧痛を目安に、上記の耳介前穴に施灸。耳介後では、側頭部の胆経反応穴に施灸。針灸治療は著効することが多い。(郡山七二「針灸臨床治法録」より)
3)聴宮穴への刺針要領(三島泰之「身近な疾患35の治療法」より)
①あらかじめ「くすぐったいような、痛いような、気持ちの良いような、この三様の響きを感じ始めたら手でベッドを叩く」よう指示しておく。この三様の響きを得ることが重要。
②寸6の#3~#5を使用。耳珠直前に聴宮を取穴。聴宮穴からやや鼻梁寄りに向けて刺入する。上記感じが出てから、さらに3~5㎜刺入し少し雀啄する。
3.中耳炎に対する鍼灸治療
1)中耳炎の針灸適応性の検討
急性中耳炎は感染症であり、我慢できない激しい痛みが特徴なので、患者は耳鼻科を受診。大部分は鼓膜切開され、痛みが大幅に軽減して安堵感を得る。その孔から排膿すると急速に改善する。針灸は相対的に不適応である。
慢性中耳炎では鍼灸を試みる価値はあるが、鼓膜穿孔がある場合、伝音性機能の回復は無理で、また外耳道からの細菌侵入にも効果ない。ゆえに本治法とはならない。
2)中耳炎の反応点
中耳を知覚支配するのは、舌咽神経からの分枝の鼓室神経である。中耳病変では、第1第2頚椎の横突起の前への刺激(天牖)の重要性が指摘できる。これは舌咽神経ブロック点として知られる。中耳炎は外耳炎と異なり、耳介前面には反応が出にくい。
3)耳中疼痛の針-完骨移動穴
①体位・取穴:患側上の側臥位。マクラをさせ、頭をやや後方に反らせる。開口、閉眼させて全身を脱力させる。乳様突起尖端の後側、胸鎖乳突筋付着部に指頭をあてながら、頭部をやや後方に曲げてできる陥凹部にとる。
②刺針:寸6、2~3番針を使用。耳孔方向に針尖が行くように刺入、
茎状突起の内側尖端の内側下縁をくぐるように徐々に刺入。1寸~1寸3分ほどの深度でグリグリした手応えがあれば弾振する。耳中に針響があれば抜針する。
③適応:耳中疼痛、耳中掻痒、中耳炎、外耳炎
④註釈:舌咽神経に刺激を与える刺針だと思われる。筆者が行っているのは、下耳痕穴
(耳垂が頬に付着する部の中央)からの直刺2㎝である。