2)病態整理
①胆嚢炎の多くは結石により起こる。結石形成の詳しい機序は不明。結石が総胆管を閉塞、胆汁が十二指腸に排泄されなくなるので、便は白色となる。一方ビリルビンは血中に吸収され、閉塞性黄疸になる。
②胆汁の流れがブロックされ、胆嚢を刺激。胆嚢収縮により腹痛。
③胆嚢は炎症を起こし腫大化←細菌(主に大腸菌)増殖して発熱(+)
④膨満により血管は圧迫され血流障害が起こり、「急性胆嚢炎」の発病
3)胆石の危険因子
肥満、高カロリー・高コレステロール食
エストロゲン高値(経口避妊薬、ホルモン補充療法、妊娠)
2.急性胆石症の鍼灸治療
針灸は疝痛に対して効果はあるが、黄疸や発熱には効果がない。要するに発熱や黄疸
が著しいもの(=急性胆嚢炎)には針灸は禁忌である。医療機関が発達した現在、急性
胆石発作で針灸受診することは殆どない。鎮痛治療であって、
発熱や黄疸に対して鍼灸では対処できない。
1)魂門刺針・胃倉刺針
側臥位にして肝兪の外方で起立筋の外縁すなわち魂門穴から、同じ高さの横突起方
向に2寸~2 . 5寸、#5~#8の針で刺入し、5~10分間置針するとすると、ほとん
どの場合で鎮痛効果が得られる。針灸は中空器官の痙攣性の痛みに速効できるようで
ある。側臥位にての胃倉刺針でも同様の効果が得られる
2)急性胆道疾患の針灸治療
断区的にはTh6-10であり、胆嚢のエリアとしては督兪~胆兪に反応が出やすい。ツボとしては背部二行線上。針灸の効果は鎮痙作用を主体とするが抗炎症作用もあるようだ。
急性胆嚢炎やただし急性胆石症に対する鎮痛は注射(たとえばブスコパンやソセゴンな
どの鎮痙剤や鎮痛剤)によるものよりも効果出現まで時間がかかる。
中国の文献では胆石症に対し、石を排出させる治療が行なわれているようだが、わが国
の鍼灸師は立場上、排出したかどうか追求する手段をもっていないので、実際の効果は不明である。ただし鍼灸をして発作が起こらなくなったという報告はかなりある。
2.慢性胆嚢炎
1)病態
急性胆嚢炎に引き続いて起こるものと、はじめから慢性として進行するものもある。
ときどき発熱や右上腹部痛が現れるが、普段は季肋部の重苦しさや膨満感、背部鈍痛などが残存する場合には慢性胆嚢炎を疑う。しかし胃炎や膵炎のこともあるので十分な鑑別診断が必要である。
2)鍼灸治療
腹部反応点は右期門や右日月に出現し、沢田G点(甲乙経での日月。右第7肋間腔で乳頭線外側2横指の部)に出現することが知られている。
背部反応点はボアス点(第10~12胸椎の右傍)に相当する胆兪、脾兪、そして京門
(小野寺胆嚢点に一致)、右天宗(早川点に一致)などが知られている。
これらの圧痛反応に施術することで、症状緩和の効果が得られることが多いが、根本治療とならないので再発することも多い。