2.切迫性尿失禁
1)切迫性尿失禁の概要
①症状:突然、強い尿意を感じ、トイレに間に合わず漏らす。
②原因下部尿路刺戟症状(前立腺肥大、膀胱炎、尿道炎)を考える
過活動膀胱
③現代医学的治療
a.炎症による知覚性切迫性尿失禁:原疾患の治療のため、抗生物質や消炎剤投与
b.抗コリン剤(副交感神経抑制剤で膀胱収縮力↓させる)が有効
3.腹圧性尿失禁
1)腹圧性尿失禁の概要
①症状:りきんだり重い物を持ち上げたり、咳をした際など、腹に力が入ると尿失禁
②原因:腹圧が、尿道括約筋と骨盤底筋の筋力を上回った場合に生ずる。骨盤底筋
(とくに尿道括約筋と肛門挙筋)の筋力低下症状である
骨盤底筋:尾骨から恥骨にかけハンモック状に張った筋肉の総称。尿道・膣・肛門周囲筋をさ
す。四足動物とは異なり、人間は直立歩行するので、骨盤底には負荷がかかる。骨盤下口の
閉鎖はこの負担に耐え、しかも内臓の出口が開くことを可能にしなければならない。
無抑制膀胱:一定量は蓄尿できるが、膀胱が時々勝手に収縮する現象。脊髄や脳の障害による
2)現代医学的治療
①軽度の場合は骨盤底筋体操(効果は3~6割)
②交感神経刺激剤
尿道括約筋の収縮力を強める目的で、交感神経β2刺激剤(元来は喘息薬)を使う。
切迫性尿失禁では、膀胱括約筋の収縮力を弱める目的で、抗コリン剤(副交感神経抑制剤、すなわち
交感神経興奮作用)を使う。抗コリン剤は夜尿症にも用いられる。さらに腸管の蠕動運動を弛めて
下痢・腹痛を止める効果もある。
③経膣的に膀胱頚部の吊り上げ手術。有効率は7~8割。
頻尿・尿失禁・排尿困難の鍼灸治療
1.中髎穴刺針の効果
現代針灸の立場では、泌尿器科や婦人科の針灸治療は共通している。刺激目標は、仙髄排尿中
枢、陰部神経(体性神経)や骨盤神経(副交感神経)であるが、両者はともにS2~S4神経から起
始し、膀胱、尿道(外尿道括約筋)、および性機能に深く関係しているので、第一の治療ポイン
トとしてはS3仙骨孔である中髎穴が代表になる。
これまで中髎が効きそうなことは予想されるものの、何を刺激していて、また実際にどの程
度疾病に効果があるのかは漠然としていたが、研究により、その概要
が判明しつつある。。
仙骨後面に水平刺するのは、実際には困難であろう。
1)頻尿・尿失禁・排尿困難に対する中髎刺針の作用
①切迫性尿失禁
神経因性の過活動性膀胱患者。最大尿期時膀胱容量が増加傾向。切迫性尿失禁患者の60
%が、尿失禁の消失ないし改善した。中髎刺針は膀胱容量を増加させる傾向がある。無抑
制収縮を抑制させる傾向がある