1)B型肝炎ウィルス検査
B型肝炎ウィルスは、B型肝炎のDNAが二重の蛋白質の殻に包まれている。内殻を構成する蛋白質がHBc抗原(c=core:芯)で、外殻(エンベロープとよぶ)を構成する蛋白質がHBs抗原(s=surface:表面)である。
上記は完全粒子の場合であり、核をもたない不完全粒子も存在する。完全粒子のHBc抗原に対する不完全粒子のそれをHBe抗原とよぶ。
①抗原反応
すなわちB型肝炎ウィルスにはHBs抗原、HBe抗原、HBc抗原の3種類があるが、慢性肝炎になると、HBs抗原(+)→HBe抗原(+)→HBc抗原(+)の順序で陽性化する。その臨床的意味は次の通り。
a) HBs抗原(+):現在B型肝炎ウィルスに感染していることを示す。
キャリアーとはHBs抗原(+)者のことである。
b) HBe抗原(+):血液中に多量にB型肝炎ウィルスが存在し、他人への感染力が強い。
※HBe抗原(+)時には、当然HBs抗原(+)になっている。
②抗体反応
しばらくすると抗原に対する抗体がつくられ、HBc抗体(+)→HBe抗体(+)→ HBs抗体(+)の順序で陽性化する。抗体が(+)となると、その時点で抗原は(-)になる。
a) HBs抗原(+)かつHBe抗体(+):弱い感染力がある。ウィルスは不活発。
b) HBs抗体(+):ウィルスが存在しない。※HBs抗体(+)時には、必ずHBe抗体(+)になっている。
2)C型肝炎ウィルス検査
C型肝炎ウィルスは、RNAウイルスで、ウイルス粒子はコア粒子と外殻により二重に包まれている。コア粒子に対する抗体をHCVコア抗体と、外殻に対する抗体をE2/NS-1抗体とよぶ。なおHCVコア抗体やE2/NS-1抗体などを含め、HCVが細胞の中で増殖されるすべての蛋白に対する抗体を、HCV抗体と総称する。
C型肝炎のHBc抗原は、現在調べる方法がないので、HBc抗体の検査から状況を推定する。
①HCV抗体:C型肝炎ウィルスに対する抗体。(+)時、C型肝炎ウィルスが侵入したことがあることを示す。ほとんどの場合、現在もウィルスが体内に存在する。
②HCVコア抗体:C型肝炎ウィルスの増殖を示す。
③HCV-RNA:ウィルスの量を示す。高値であるほど感染力が強い。
3)例題解説
①症例1:患者Aの肝機能検査をすると、GOT,GPTとも正常。HBs抗原(+)、
HBe抗原(-)、HBs抗体(-)、HBe抗体(-)だった。この患者の状況は何を示唆しているか?
解答:B型肝炎キャリアー
②症例2:患者Bの肝機能検査をすると、GOT,GPTとも高値。HBs抗原(+)、
HBe抗原(-)、HBs抗体(-)、HBe抗体(+)だった。この患者の状況は何を示唆しているか?
解答:B型肝炎発症状態。弱い感染力をもつ。
③症例3:患者Cの肝機能検査をすると、GOT,GPTとも高値。HCV抗体(+)、
HCVコア抗体(-)、:HCV-RNAは低値だった。この患者の状況は何を示唆しているか?
解答:C型肝炎発症状態。弱い感染力をもつ。