②ピロリ菌の除菌治療
7日間の抗生物質投与。除菌成功率は7割程度。
胃液分泌のしくみ
食物での胃壁伸張→ ガストリン分泌→主細胞(ペプシノーゲン↑)と壁細胞(塩酸↑)を刺激
ガストリンは幽門前庭部から血中に放出される。
主細胞→ペプシノーゲン(蛋白分解)
壁細胞→塩酸(殺菌) 2つが合してペプシンとなる。
副細胞→ムチン(胃壁自己消化防止)
3.機能性ディスペプシアFD
概念
機能性ディスペプシアは、NUD(潰瘍のない消化管症状)とも略さ
れる。これは従来、胃下垂・胃けいれん、慢性胃炎と呼ばれていたものである。胃内視鏡で胃の炎症所見と、患者の訴える胃炎症状が一致しないことから、最近になって確立された。日本人の4人に1人が、月に2回以上のFD症状を自覚しているとされている。
2)分類(Rome国際委員会のRomeⅢ診断基準2006年)
①食後愁訴症候群(PDS)
症状:胃膨張感(胃に食べ物がたまっている感じ)、腹部のむかつき、食欲不振。
原因:
a)胃受容弛緩の異常:健常者では、食物は近位胃(胃の食道に近い側)が膨らみ(受容性
弛緩とよぶ)、いったん蓄えられ、遠位胃(十二指腸に近い側)にゆっくりと内容
物を送り出している。ストレス等による障害で、胃が膨らまなかったり、柔軟性が
損なわれると、少量の食べ物が入った状態で、胃の内圧が上昇し、満腹感を感じてしまう
b) 胃排泄遅延:十二指腸に食べ物を送り出せない。
②心窩部痛症候群(EPS)
消化器知覚過敏: 潰瘍はないのに、胃潰瘍に似た症状が出る。心窩部の重い痛み。
2)治療:器質的疾患の除外後、消化管蠕動改善薬(ナウゼリン等)を第一選択として2週間投
与。それで効果の乏しい場合、心理ストレス要因の検討を行い、胃酸分泌抑制薬、抗不安薬、抗うつ薬などの投与を検討する。
胃疾患の鍼灸治療
1.胃・十二指腸潰瘍の鍼灸治療
H2ブロッカー治療が行われるにつれ、胃・十二指腸潰瘍で入院する患者、さらに手術する患者は激減した。また再発予防にはピロリ菌の除菌治療が行われ、再発率も大幅に低下してきた。このような状況下にあっては、針灸の活躍する場面は減少してきている。しかしながら、H2ブロッカーを投与すると白血球の顆粒球が減少してしまう。これは交感神経機能の低下を示唆し、この結果として胃酸の分泌が低下するのであって、長期使用には向いていない。またピロリ菌除菌率も7割程度であるから、薬剤を使うことなく、交感神経緊張状態を改善できれば望ましいことであるに違いない。
1)日常生活上の交感神経緊張状態を改善
胃液分泌量の減少および胃の蠕動運動不活発はともに交感神経緊張の結果で起こるものであり、その根底には日常生活習慣上の交感神経優位がある。鍼灸(または指圧マッサージ等)でリラクセーションを図る必要がある。
2)胃や横隔膜の交感神経緊張状態の改善
体壁-内臓反射理論にもとづき、体幹前面と体幹背面の体壁反応点に施術することで、体性神経興奮を鎮める。