鼓腸の原因
消化管内にガス(空気を含む)が溜まっている状態を 鼓腸とよぶ。鼓脹となる重篤疾患にイレウスがある が、多くは機能性であり、過敏性腸症候群の徴候に含 める。 口から飲み込まれた空気は、大部分がゲップとして 排出されるが一部は胃泡として留まり、一部は腸内に 進む。腸内ガスの大部分は、肛門からおならとして放 出されるか、消化管壁から吸収されて血液中に入り肺 で排出される(おならを我慢すると、このガスは血液に溶け込み、肺から外に放出される。この時、ニ オイ成分はなくなっているので、吐息が臭うことはない)。 正常な人では1日に10回以上おならが出るが、鼓腸があるとそれ以上多くのおならが出る。 消化管の細菌も代謝の分解産物としてガスを発生する
鼓腸の分類
①呑気症(空気嚥下症) どんき 食事の際の空気嚥下のほか、緊張すると唾を飲み込む回数が増える傾向にあり、この時、 唾液とともに空気も嚥下し、胃泡が次第に大きくなる。主症状は食後の心窩部膨満感、 おくび多発。胃にあるガスはゲップとなり、腸内のガスはおならとなる。 ※炭酸飲料を飲んだ後に出るゲップを利用し、胃泡中の空気を口から出すとよいという報告がある
②脾弯曲症候群と肝湾曲症候群 食事の後でS状結腸が強く収縮して腸内ガスや糞便の通 過を妨げると、左脾結腸彎曲部(横行結腸が下行結腸に移 行する部)や肝湾曲部が伸展され痛みが現れる。過敏性腸 症候群の一種
持久走時に生ずるの脇腹痛の機序と対処法 この病態生理的機序は、ランニングして脇腹が痛くなった者を、立位の状態で撮影できるMRIで腹部撮影することで、痛む原因 が明らかになった。持久走中、大腸の蠕動運動が小さくなる一方、走る振動によって腹部で腸全体が大きく 揺れるため、大腸内のガスが大腸の上部に上昇する。その際に大腸の左右の曲がり角(肝彎曲部や脾彎曲 部)にガスが溜まりやすく、このガス塊が周囲の神経に刺激を与え強く痛むようになるという。運動を止め ると大腸が蠕動を再開するので、ガスが分散し、痛みがなくなる。 。脇腹 が痛くなったら、ランニングしながらでも、痛くなった側 の上肢を上へ挙げるというもの。背中を痛くない側に横に 反らすようにすると、さらに効果が高まるとの。この動作 により、ガス塊が分散した結果であろう
③小腸の栄養吸収力低下 小腸の栄養吸収力が低下すると、大腸に栄養分が入る。それを養分として腸内細菌が異常 増殖し、これにともなって大腸内のガス貯留増大することがある
イレウス(腸閉塞)との鑑別
①イレウスとは:腸の中を便が流れなくなり、停滞する状態である
②機械的イレウス 鼓腸+腹痛+嘔吐では、機械的イレウスを考える。約90%はガンなどの腫瘍や潰瘍によ る狭窄、術後の癒着などで腸が詰るために起こる。閉塞の程度が強いと、腸の血液循環が悪 化し、腸管の壊死を来たす絞扼性イレウスになる。絞扼性イレウスの症状は激烈な腹痛であり、緊急手術を要する。症状は腹部膨満感と嘔吐で、ひどくなると吐物に便臭を感じる。腹 部単純X線写真で特徴ある鏡面像(ニボー)がみられる
③機能的イレウス 腹部手術後や腹膜炎で一過性に起こる。腸が詰っていないにもかかわらず、内容物が停滞 して動かない状態をいう。機能性イレウスでは手術の適応はなく、絶食で輸液療法をおこな えば、多くは症状の改善をみる。術後に排ガスが出ると一安心するのは、イレウスが起き ていないことが確認できるため。 機械的イレウス(90%) 機能的イレウス 診断絞扼性(複雑性)イレウス閉塞性(単純性)イレウス麻痺性イレウス
腸管の血行不良あり 腸管の血行不良なし 腸支配の運動神経麻痺 原因腸重積、捻転、脱腸による異物→大腸癌、大腸ポリープ急性腹膜炎、腹部手術後 ヘルニア腸癒着 症状突発的な腸管阻血による激腹痛、嘔吐、腹部膨満、蠕動不穏、排便・排ガス消失 烈な腹痛、嘔吐閉塞性イレウスでは、グル音は増強し、 →壊死性腹膜炎機能性イレウスではグル音消失する。 処置腸重責では高圧浣腸、腸閉塞による悪循環防止の意原疾患の治療 ないし緊急手術味で輸液、抗生物質投与 手術対象にならない → 改善ない場合は手術