扁桃炎・咽頭炎とその鑑別
1.扁桃炎との鑑別診断 「扁桃腺炎」は誤り
針灸で適応なのは、痛みによる嚥下困難(舌咽神経興奮)であり、扁桃炎がその代表である。
嚥下困難の中には、「食物がつっかえる」ものがあり、食道の器質的疾患の場合と、心因性の場合がある。
嚥下困難嚥下時痛による:扁桃炎
食物がつかえる食道の器質的疾患(アカラシア、食道癌、食道憩室)
心因性
2.急性扁桃炎
1)扁桃とは
咽頭にはいくつかのリンパ組織の集合体がある。呼吸道・消化道入口として、咽頭を輪状に取り巻き、細菌やウイルスの体内への侵入を防いでいる。これらのリンパ組織を総称してワルダイエルの咽頭輪とよぶ。
12時:咽頭扁桃(=アデノイド)
2時・10時:耳管扁桃
4時・8時:口蓋扁桃←目視できる
6時:舌(根)扁桃
2)原因:多くは感冒による免疫低下時、細菌の二次感染。
3)症状:高熱(39℃以上)、嚥下時痛(唾液を呑み込む際の咽痛←舌咽神経痛による)
所見:開口して口蓋扁桃肥大と発赤をみる。
顎下リンパ節腫脹(細菌の二次感染の所見)し、押圧で痛みを感じる
R/O 急性咽頭炎
口蓋扁桃に強く出現した咽頭炎を扁桃炎とよぶ。急性咽頭炎では微熱であり、扁桃炎のような高熱は起きない。また咽頭炎では咽頭痛あるが、唾液を呑み込む際の嚥下痛はない。
4)治療:消炎剤塗布、トローチ、抗生物質内服
5)合併症:急性中耳炎、急性糸球体腎炎、リウマチ熱
扁桃周囲炎と扁桃周囲膿瘍
急性扁桃炎が周囲に波及したものを扁桃周囲炎、それが膿瘍を形成したものを扁桃周囲膿瘍とよぶ。高熱を発し、自発痛、嚥下痛が著しく、しばしば開口困難をきたす。治療は抗生物質を十分に投与。場合によっては切開排膿する。
3.慢性扁桃炎
1)原因:急性扁桃炎の反復や体質。
2)症状:平素は咽頭の自覚症状は少ないが、急性扁桃炎を反復しやすい。
所見:前口蓋弓に限局性発赤があり、扁桃表面は肥厚し、凹凸が著しい。
3)病巣感染とは
慢性扁桃炎が原因となり、遠隔臓器に疾患を生じることがある。→腎炎、関節炎、
心内膜炎、掌蹠膿疱症など(アレルギーⅢ型反応)
※掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう):手掌や足裏に小さな膿疱が多数できる。扁桃炎などの細菌感染に続いて起こったアレルギー。掻痒感はない。水虫との鑑別を要する。治療はステロイド外用薬のほかに扁桃炎の治療を行う。