2)乳汁分泌期
①プロラクチン(催乳ホルモン)
出産により卵胞ホルモンと黄体ホルモンは分泌を停止する(黄体ホルモンの役割
である妊娠管理の終了)。これらのホルモンの停止により、下垂体前葉ホルモンの
一つであるプロラクチンが分泌開始し、乳腺で母乳を製造開始し、導管内への分泌
を促進させる
②オキシトシン(射乳ホルモン、子宮収縮ホルモン)
新生児の乳首吸引が刺激となり、下垂体後葉からのオキシトシンが分泌される。
オキシトシンは導管周囲の平滑筋弾力線維を収縮させ、乳汁を射出させる。オキ
シトシンには子宮収縮作用もあり。
2.乳汁分泌不足と鍼灸治療成績
乳汁分泌不良の婦人99例に対して、「乳房マッサージ群」と「乳房マッサージ+円皮針群」に2分して治療効果を調べた。円皮針は中府・膻中・少沢?に貼附し週に1回交換。希望があれば数回繰り返した。この結果乳房マッサージ+円皮針群の方が有意に効果あった。
内分泌の問題と、産後の体力低下や情緒因子の問題がある。鍼灸治療は後者に対して効果がある。
乳房腫瘤
乳房に異常を認め医療を受診する者の大部分は乳房腫瘤(シコリ)を主訴としている。
乳房にシコリを生ずる疾患は、乳房の悪性腫瘍・良性腫瘍(おもに乳腺線維腺腫)・
乳腺症であり、乳腺症の頻度が最も多い。乳房のシコリで問題になるのは、乳癌との鑑
別なので、シコリを発見したら専門医に診断を依頼する(とくに30歳台以降の者)。
乳腺症(大部分)
腫瘍乳癌
良性腫瘍(乳腺線維腺腫が最多)
急性乳腺炎鬱滞性乳腺炎
化膿性乳腺炎
開業針灸院のベッドサイド診断
乳房腫瘤
両側性、生理前に増悪し、生理がくると軽快→乳腺症
乳房痛(+)、乳房発赤(+)→乳腺炎
乳房の腫瘍(40~50歳代→乳ガン、20~30歳代→乳腺線維腺腫)
1.乳癌
1)概念
乳癌のほとんどは乳管から発生する。増殖パターンには、乳管の中を広がっていく「乳管内進展」と、乳管の壁を破って乳管の外(=間質)に広がる「間質浸潤」の2つがある。癌細胞が間質へ進展すると、そこにある血管、リンパ管に癌細胞が侵入するため、乳腺以外の部位に転移をきたす可能性がある。とくに肝臓、肺、脳、骨等に転移を起こしやすい。
早期の乳癌とは、癌細胞が乳管内あるいは小葉内にとどまり周囲組織への浸潤が見られない
非浸潤癌(乳癌全体の6~7%)で、理論的には転移はありえず、適切な治療が行われれば完治できると考えられている。
乳癌は4 0~5 0歳代の閉経前後に多い。近年増加傾向にあり、現在では子宮癌よりも
乳癌の方が多い。5年生存率7 0 %(腋窩リンパ節に転移しやすい)