2)危険因子
①食生活の欧米化、肥満、アルコール過飲
②エストロゲン分泌期間が長い
(初経が早い、未婚、初産が遅い、出産経験なし、閉経が遅い)
3)所見:シコリと乳頭分泌物(血性)
視診では、えくぼ様陥凹。触診では硬い、表面は凹凸、無痛、境界不明瞭。
乳房の外上方1/4の部に好発(乳腺組織が最も多い部位である)
乳ガンの自己チェックは、月経終了後1週間以内に行う。月経直前は乳房が張る。
堅く境界不鮮明なことから、「鉄を真綿で包んだような」という表現をする。
4)検査:超音波検査、マンモグラフィー(装置に乳房をはさみ圧迫しながらX線撮影)
マンモグラフィー:
乳房専用のX線検査、いわゆるレントゲン検査で、板状のもので
乳房をはさみ圧迫して撮影。乳房を圧迫するのは、平たくして撮影
することで病変をより鮮明に写し出すとともに、厚みを薄くするこ
とでX線の被爆量を減らす効果がある。
マンモグラフィーは、乳がんの初期症状である微細な石灰化など
を検出できるため、早期発見に有効。乳癌検診では最も信頼性の高
い検査方法だとされている。
美容整形手術で、豊胸術を行なうと、乳癌の早期発見は困難になる。
乳癌発見の症例:74才女性。主訴は腰痛と下腿つっぱり。針灸治療3回目、右乳房上外方に直径3㎝ほどの腫瘤発見(本人は気づかなかった)。患者は肥満体で乳房も大きいので、シコリは「鉄を真綿で包んだような」に該当せず柔らかく感じた。また高齢(74才)でもあるので、おそらく乳癌ではないと思うが、一応検査するよう指示。その4日後検査し、乳癌が判明。
1ヶ月半後手術した。術後、上肢のリンパ浮腫発生したが次第に軽快した。術後は放射線治療を継続している。5年後の現在、左側乳房に転移したが、元気で活動中である。
2.乳腺症
1)病態
乳癌を心配して外来を受診される方のなかで最も多い疾患。乳腺の萎縮退縮過程で発生
する生理変化。30歳~更年期に好発。女性の6 0%に出現。相対的なエストロゲンの過
剰状態が関係しており、生理とある程度の周期性をもっている。
痛みは月経前に強くなり、月経が始まると軽減する、という周期性をもつことが多い。
乳頭から分泌物が見られることがある。閉経後には徐々に乳腺症症状は消失していく。
2)所見
乳房に表面がでこぼこした、柔らかいしこり状のもの(=乳腺そのもの)を触れる。
両側性に出現することが多い。
3)治療
ホルモンバランスを正常に戻すように生活を整えること(具体的にはストレスを避ける、充
分な睡眠を取ることなど)です。痛みが強いようなら、ホルモン剤や鎮痛剤を投与。
3.乳腺線維腺腫
乳腺間質の増殖。乳房に発生する良性腫瘍では、最も高頻度。10代後半から30代の比較
的若い女性に多く見られる。主訴は乳房部のしこり。一般的には痛みはなく1個だけのことが多
いが、ときに多発性のこともある。
閉経後には頻度が少ないためエストロゲンの影響が考えられており、またホルモン補充療法を
実施中の患者に、線維腺腫の発生頻度が高いことも報告されている。治療はシコリのみ切除。