1)発汗法(初期の発熱初期に使用)
これから熱が上昇する気配(悪寒など)があったり、高熱時でも発汗しない情況で
は、発汗法を行なう価値がある。中医学でも外感風邪に対しては、清熱解表法すなわ
ち「汗法」による解熱を行い、発汗作用のある葛根湯を処方する。
針による発汗法としては、人体で最も汗のかきやすい部とされる肩甲上部~肩甲間
部の領域に、座位ににて、速刺速抜を行なうことで発汗が促進されるという考え方が
ある。単に発汗させるだけなら、赤外線などで上背部を温めればよいだろうが、加熱
するので却って熱は上昇する。
発汗亢進や無汗は、血管運動神経や皮脂腺分泌の機能異常でも起こる。
頚部、肩甲部のトリガー領域が消退すると、皮膚の分泌機能、肌や毛髪の質の改善が
見られ、また無汗や発汗過多も改善すると記している。
2)頸部筋を緩める治療
②天柱・瘂門・風府
感冒で発熱ある患者に、蒸しタオルを風府にあてることで、体温
を上昇させることを推奨している。38℃の発熱者の場合、この方法により一時的に40℃程度に体温は上昇するが、熱が下がるのも早くなるという。蒸しタオルは冷えたら熱いものに交換し、これを4~5回繰り返す。項部にコリがある場合、体温中枢である間脳が血流不足となり、それが間脳の情報処理を誤らせることがあり、このような場合には、頚肩のコリ治療が解熱効果を生む場合がある。
長く続いていた原因不明の微熱が、項筋へのステロイド希釈液注射によりピタリ
と治ることが多い。
大椎の多壮灸:発熱に効果ある。7壮では効かず最低20壮以上必要。灸すると背中にパッパと熱さが広がる。施灸後は背中がポカポカ温まる。大椎の多壮灸で効果ない場合には、瘂門の多壮灸に変更する。瘂門の灸は、クギを頭に打ち込まれたような強い感じにならねば効かない。
耳鼻咽喉科症状と頸部のコリ治療
1.頸部筋のコリがもたらす非整形外科症状と注射
筋緊張部位に微量ステロイド希釈液を注射する方法で、
多彩な機能性の愁訴の治療。
なかでも項部筋(頭半棘筋・頭板状筋)と側頸筋(前斜角筋・中斜角筋・肩甲挙筋など)の
緊張がもたらす症状は、非整形外科的疾患も多いことに驚かされる。基本的には、これらの部の
筋の圧痛の有無により最終的な治療点を決定している。
個々に症状個々に対する治療点を整理するが、項筋をK、側頸筋をSと表記する。
①耳鳴(一側性):K+S
②くしゃみ、鼻水:K+S
③鼻閉:K+S
④咽痛・微熱:K+前頸部(胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、輪状甲状筋、下咽頭収縮筋など)
⑤口内炎:K+S+胸鎖乳突筋下顎部の前縁(顎二腹筋後腹か?)+その前方の頸筋(外頸静脈の走行部)
⑥眼痛、コロコロ感:K+S+側頭筋+肩井穴付近の僧帽筋+肩甲間部筋
⑦悪寒(発熱なし):K+肩甲間部筋
⑧こじれた風邪症状:K+S+頸前方の諸筋
⑨発作性の動悸:K+S+肩甲間部筋
⑩期外収縮:K+S+左Th1~Th3背筋
2.斜角筋のコリを診る体位の工夫
副作用が問題とならないほどの微量のステロイド希釈液であるが、針灸師は、
これを真似できない。しかしながら筋を伸張状態にさせた状態で刺針するという促通法を用いることで、これに近い効果が出せると私は考えている。
項部の半棘筋や頭板状筋への刺針は、非常に適応が広く、重要なものであるが、この技法については、すでに言い尽くされた感がある。一方、斜角筋については、斜角筋症候群における腕神経叢と鎖骨下動静脈の絞扼障害という点では知られているものの、斜角筋のコリ自体がもたらす症状については、殆ど知られていない。
斜角筋を診るには、後頸三角(僧帽筋、僧帽筋、鎖骨に囲まれた三角領域)を広げた方
がよいので、トラベルは患側の手を尻の下に入れる体位の工夫をする。そして健側の手を頭に当て、頭部を回転・側屈させて、前・中・後斜角筋を伸張させるという。
側臥位は、斜角筋に刺針することは容易になるが、斜角筋を伸張状態にさせることはできない。