3.長びく風邪の治療
風邪がなかなか治らない場合には、次の疾患こともあるので鑑別を要する。
R / O アレルギー性鼻炎、慢性咽頭炎、慢性気管支炎、上咽頭浮腫
1)交感神経優位にする施術
「半年もずっと風邪をひいている」という者がいる。これは風邪を契機として発病
した自律神経失調状態(副交感神経優位状態)が、風邪ウィルス消失後も続いている
と考えれば、座位での風門の多壮灸のように、身体を交感神経優位に誘導する治療が
よいといえる。
2)前・側・後部の頸部のコリをゆるめる施術
頸部の後方の筋(頭板状筋、頭半棘筋)、前方の筋(胸骨舌骨筋、胸骨甲状筋、輪状甲状筋、舌咽頭収縮筋)、側方の筋(前中斜角筋、肩甲挙筋)などに著しい硬結と圧痛が必ずあるので、これらの筋に対して希釈ステロイド注射をすると、短時間でこじれた風邪症状が消失する。
風邪の基本鍼灸治療
・風邪の進行期:座位にてTh1~Th3デルマトーム上
(起立筋で大杼~肺兪と夾脊および、大椎~身柱)
に施灸。針ならば浅刺にて速刺速抜
・風邪の回復期:伏臥位にて背部兪穴置針
・対症療法鼻炎:鼻周囲の三叉神経第1枝刺激:夾鼻、睛明
扁桃炎:迷走神経分枝の上喉頭神経刺針
扁桃静脈うっ血改善目的に扁桃直刺
咽頭炎:迷走神経分枝の上喉頭神経刺針
喉頭炎:迷走神経の気管軟骨分布部への刺激:天突、天突移動穴
・風邪をひきにくくする治療:大椎~身柱の自宅施灸
発熱の治療
1.鍼灸院での診察
高熱疾患では第一義的には感染症を疑う(その大半は風邪症候群)。
1)微熱
微熱患者の診断は難しい場合が多く、原因不明で特徴ある他症状を示すことも少な
い。微熱に併発する自覚症状としては、全身倦怠感、頭痛、食欲不振、睡眠障害など
である。とくに注意すべき疾患としては、結核・悪性腫瘍がある。
悪性腫瘍による発熱を腫瘍熱とよぶ。これは癌細胞崩壊の際に出る熱である。
・だるさ、食欲不振→膠原病、慢性肝炎
・発汗、いらいら、動悸→甲状腺機能亢進症
・薬の副作用→抗生物質、鎮静剤、抗欝剤の連用
・成人女性→月経前熱、妊娠
・神経症
結核:全身倦怠感、体重減少、盗汗、咳、息切れ、既往症に注意
悪性腫瘍:とくに老人の微熱には注意
2.発熱の鍼灸治療
発熱があれば感染症が強く疑われるので、基本的に針灸は不適応である。また解熱さ
せるだけでよいのならば、解熱剤服用で容易に目的が達せられる。
針灸で発熱を扱う状況としては、いつまでたっても微熱が続いているという場合に限
定される。感染症は治癒したが感染症を契機として生じた自律神経失調症が持続してい
る状況であろう。治療方針には、①発汗させる、②頚部交感神経刺激などの方法がある。