④咳嗽、胆石疝痛の鎮静
頸動脈洞には迷走神経が分布している。咳嗽や胆石疝痛は迷走神経過剰興奮反応なので、迷走神経の過敏を緩和させれば、これらの症状は治まる。
2.扁桃直刺
1)意義:扁桃周囲の静脈鬱血の改善?
2)術式:座位。成人男性では2寸#5を使用。下顎角の下から後上方に、すなわち腫
れた口蓋扁桃を狙って2.5㎝刺入。局所に響かせる。角度を間違えると針響は舌先や舌根周囲にくるが、この場合はやり直しする。
3)効果:急性扁桃炎には1回の施術で嚥下痛は解消する。慢性症で扁桃肥大したもの
でも、少々気長に治療継続すれば縮小する。
3.治喘
1)意義:頭蓋骨部器官全般の交感神経は、交感神経の上頚神経節から出発する。この
上頚神経節と結ばれる体性神経はT h1脊髄神経なので、大椎付近の刺激は、頚部交感神経節刺激としての意義をもつ。
2)取穴:座位。大椎(C7T h1棘突起間)の外側5分。
3)刺針:3~5番針を6分~1寸刺入する。すると咽頭の方に響くことが多い。
中国では脊柱に沿って斜め下方に4~5㎝刺入する。
4)効果:治療直後から喉の痛みが軽減したり解熱したりすることがある。
4.舌咽神経刺激
1)意義:中咽頭知覚(舌根~扁桃)を支配する舌咽神経の直接刺激
2)下耳痕刺針:神経ブロックで用いられる刺針点を、鍼灸針で行ってもうまく響かせることは困難である。そこで筆者は頬面の耳垂付着部後部の中点「下耳痕穴」を刺入点とし、直刺2㎝する方法を考案した。針は茎状突起の前を通過する。耳奥に放散痛を得る。
舌咽神経の枝の鼓室神経は、鼓膜知覚も支配しているので、中耳痛にも適応がある。鍼灸臨床では、難聴・耳鳴に対し、この部に20分間以上置針する方法も用いられる。
下耳痕穴から直刺浅刺すると顔面神経幹に当たる。これは顔面神経麻痺の治療に用いる。
3)舌根刺針
舌根部は、下顎骨の直後にあり、舌咽神経支配が知覚支配している。この部から刺針
し、舌根や咽喉に針響を与える。
5.上喉頭神経内枝ブロック刺
1)意義:下咽頭知覚(舌骨~喉)を支配する上喉頭神経知覚枝の直接刺激
ポッテンジャーによれば、上部喉頭神経が興奮すれば喉頭異物感が出現するという。
2)術式
①廉泉穴(前正中線上、甲状軟骨と舌骨の間隙)の外方で、舌骨の大角の直下を刺
入点とする。
舌骨の大角の直下には甲状舌骨膜に孔が開いており、上喉頭動脈と上喉頭神経内
枝が貫通している。
②ここより内方やや前方に刺入し、耳に放散痛が得られる部を探して2㎝刺針する