4)普段は眼瞼下垂を呈していても、本人の好きなテレビをみている時や、趣味に没頭してる時
など、交感神経緊張状態でミュラー筋が緊張した結果、眼瞼下垂が一時的に改善されている場
合がある。この時の治療は、ワゴトニー(副交感神経緊張状態)体質を是正する目的で、気管
支喘息の治療と同様に考え、上背部督脈に施灸すればよい。(単に一過性に改善させるだけな
らば、身体のどこにでも響かすような針をすれば済む)。
5.結膜炎、角膜炎の鍼灸治療
1)考え方
鍼灸治療は、「膜」の病変には適応がある。なぜなら「膜」には血流があり、それを変化さ
せることができるからである。結膜炎とは、眼部粘膜を保護する表面膜の病変。角膜炎とは眼
球本体を保護する表面膜の病変である。
2)治療法
結膜炎と角膜炎の共通点は「充血」であり、角膜炎ではこれに加えて三叉神経第1枝刺激に
よる「痛み」が出現する。
①充血への対処:局所循環改善を目標として、太陽や和髎への刺絡または施灸
交感神経緊張に誘導し、血管を収縮させることを考える。
②痛みへの対処:三叉神経第1枝の刺激→陽白刺針、前頭神経ブロック刺針。
眼の周囲への刺針→特に攅竹、絲竹空、陽白、客主人への浅刺
6.白内障の鍼灸治療
白内障は水晶体の混濁に由来する。水晶体が血管、神経組織を持たないために人体の治癒機
転が作用しない非可逆性の病態と考えられている。高度白内障の場合は手術は唯一の治療方法
になる。
白濁する部位により、核白内障、皮質白内障、嚢下白内障と区分される。うち視力障害を比較的引き起こさ
ないのは皮質白内障である。鍼灸は皮質白内障に最も適しており、手術するほどではないが、目がかすむと
いうタイプには非常によいという。白濁の程度が減少するか否かについては別である。
7.緑内障の鍼灸治療
鍼灸はそれほどよい適応症とは思われない。殆どその根源に迫ることができず、僅かに眼球
の痛みを緩和させたり、眼圧亢進に伴う頭痛、嘔気をやわらげたりできることもできる程度で
ある。
眼の周囲の攅竹、陽白、客主人、絲竹空などに針を刺し、攅竹などから少量の瀉血を試みる。
場合によっては症状が急速に緩解することもある。後頚部の天柱、上天柱、風池などの刺針も
大切である。
8.網膜・眼底疾患の鍼灸治療
網膜や眼底疾患は、眼の最深部の病変であり、視力低下・視野窄症状が出現する。このタイプ
の疾患に対する治療は一般に難治である。中国の報告を読むと、かなり効果があるように書かれ
ていることが多いが、信頼性は高くない。