レイノー病
1)病態・症状 ・寒冷暴露に際して四肢先端動脈が一過性収縮する(主幹動脈拍動は消失しない) ・左右対称の指に起こる発作的な色調変化が初発。一次相は蒼白、二次相はチアノー ゼ、三次相は動脈拡張による発赤。発作時は患部の知覚異常を訴える。 2)分類 レイノー現象が単独で出現するものをレイノー病とよぶ。レイノー病は機能的血管 収縮によるもので若い女性に多い。 一方根底に器質的疾患があり、症状の一つにレイノーがあるものをレイノー症候群 とよぶ。レイノー症候群はレイノー病に比べて圧倒的に多い。レイノー症候群をきた す原疾患には慢性動脈閉塞症が多い。その代表は、閉塞性動脈硬化症(ASO)、 バージャー病(=閉塞性血栓血管炎TAO)、膠原病である。 1次性:レイノー病(機能的血管収縮) 2次性:レイノー症候群慢性動脈閉塞症(閉塞性動脈硬化症、バージャー病) 膠原病(SLEなど) 胸郭出口症候群ほか。 2)レイノーの針灸治療 ①レイノー症候群の針灸治療の治療効果 レイノー現象出現時に針灸することは、タイミング的に難しいので、非発作時に 針灸することになる。症状好発の指間と前腕穴(手三里など)に刺針パルス通電を すると、発作が起きにくくなる傾向があるという。レイノー症候群における針の効果を検討した。一次性または二次性レイノー 症候群の被験者に本物または偽の刺激を行った。本物の治療を受けた一次性レイノー被験者は、 有意な発作頻度の減少と血流増加が認められた。二次性レイノー被験者はポジティブな傾向を示 しただけだった。偽の治療を受けた被験者は、一次性二次性とも有意な変化が見られなかった。 ②鍼灸治療 レイノー病により左右の手の指端が黒色に変わり壊疽がはじまったばかりの患者 に対して、血管周囲神経に刺激を与える針灸治療を6ヵ月間行ない、指端の壊疽発 生を防止しできた。鍼灸治療を継続しても、重症のものでは6ヵ月~1年ほど要す る。 a.上肢の手指の治療:洞刺、沢田流合谷(標準合谷と陽谿との中点で橈骨動脈手 背枝拍動部) b.下肢の足指の治療:衝門(鼠径溝にある大腿動脈拍動部)、太衝(第1第2 中足骨底の間で足背動脈拍動部) c.四肢共通の治療:指先井穴刺絡
バージャー病(閉塞性血栓性血管炎) (TAO)
1)概念 原因不明で、四肢の遠位部の中~細動脈に、血栓形成とそれによる阻血を病態とす る。20~40才代男性の喫煙者に多く発生する。動脈造影では、動脈の突然の先細 り、閉塞所見。 2)症状:指趾の強い阻血症状(潰瘍、疼痛)が早期に出現。後に間欠性跛行も出現。 3)治療 ・禁煙←病変の進行を止める ・交感神経切除術(副交感神経優位となり血管収縮を防ぐ) 上肢→上胸部交感神経切除術、下肢→腰部交感神経切除術 バージャー病(TAO) 閉塞性動脈硬化症(ASO) 病理動静脈血管炎による閉塞性血栓動脈硬化による血管内腔狭小 年齢性別40才以下。ほとんど男性40才以上。男性>女性 喫煙密接な関係やや関係あり 罹患部位中・小動脈、下肢>上肢大・中動脈、下肢が大部分 症状指趾の阻血症状(潰瘍、壊死、間欠性跛行、 疼痛)→後に間欠性跛行高度な場合は下肢壊死 合併症遊走性静脈炎高脂血症、高血圧、糖尿病 間歇性跛行を起こす疾患分類 血管性バージャー病 閉塞性動脈硬化症 神経性:馬尾性脊柱管狭窄症 2)鍼灸治療 「侵襲部と健常部との境界へ施灸すると、効果ある場合もある」とし ているが、鍼灸治療はあまり効果ないようである。