肩腱板断裂
1)病態 肩腱板の断裂で、棘上筋腱が大結節に付着する付近に好発する。外傷性と非外傷性(=老化 現象)がある。肩腱板の完全断裂であれば上肢の挙上困難となるが、不完全断裂や微小断裂の 場合には腱板炎と区別がつきにくい
2)診断 肩の打撲や強打の既往あり。腱板炎よりも罹患年齢が高い。 完全断裂など断裂の程度が強い場合には、腕落下テストが陽性になる
石灰沈着性腱板炎
1)病態 老化等によって腱板が割れ、体液が滲出し、その体液から産 生された石灰が肩関節の後上部の空隙に集まり塊ができること がある。とくに棘上筋腱部における石灰沈着が、肩峰下滑液包 に触れた際、突発的に肩関節の激痛を生じ、肩の自動運動が不 能となる(痛みのための運動制限)
2)診断 突発的な肩関節激痛。激痛のため肩関節の自動運動不能。 肩関節の他動運動には異常を認めない。 上腕骨大結節部の圧痛(+)、X線写真における石灰沈着の証明
野球肩(=水泳肩)
1)病態 野球での投球や水泳(クロールやバタフライ)の際に肩関節痛を生ずる症候群をいう。 投球時、加速期には肩関節前方が過緊張に、フォロースルー期には肩関節後方が過緊張状態 になる
2)分類 ①肩前方の障害:上肢を挙上するスポーツでの使い過ぎ症候群でよくみられる。 上腕二頭筋長頭腱腱炎(最多)、肩峰下滑液包炎、肩腱板損傷などの病態になる。 ペインフルアーク(+) ②肩後方の障害:肩腱板後方にある棘下筋腱と小円筋腱は、フォロースルー(腕の振り抜き) の時、肩から上腕骨頭が抜けないように緊張を強いられる。肩関節部の後方四角腔にあ る腋窩神経や上腕回旋動・静脈の神経血管障害を起こすことがある
拘縮期の治療
モビリゼーション
モビリゼーションとは、整体手技の一種で、瞬間的矯正をかけることなく、関節に細やかな 運動を繰り返し与え、硬直した関節部分を動くように回復させたり、痛みを軽減させるテク ニックのことをいう。関節モビリゼーションともいう。 <癒着をゆるめ、肩関節腔を拡大する手技> 凍結後であれば通常の針灸では治療法に乏しく、ROM拡大を目的とする手技療法が主体と なる。下方関節包が短縮していたり、腱板の骨頭を関節窩に引きつける求心力が低下している 場合、自動運動で上肢を挙上すると、骨頭の下方移動が障害され、上腕骨頭を包む腱板と、こ れを上方から覆う烏口肩峰アーチと衝突が生じ、運動痛を誘発したり、この部分の炎症を生じ させる。 この衝突を避けるため、上肢の長軸に沿った遠位方向への牽引力、もしくは徒手的に骨頭の 下方移動を働かせながら可動域を拡大する方法が考案されている
①仰臥位で患側上腕を45 度程度外転位にして上腕を両手で保持する。 ②患者の腋窩にバスタオルを挟み、施術者の足指を患者の腋窩に入れる。 ③患者の上腕を外旋力を加えつつ長軸方向に引っ張り、痛みを訴える直前まで外転角を増す。 ④この動作を10 ~ 20 回程度行う
カリエのリズミックスタビリゼーション
律動的固定。術者と患者がともに力を加えているが、 互いの力が相殺されるので、あたかも関節が動いていないようにみえる。等尺性収縮の手技で ある。癒着した関節包を緩める効果はないが、筋の柔軟性と収縮性を高めるので、肩関節可動 域拡大の効果が得られる
運動療法 古典的に、コッドマンCodman のアイロン体操、滑車体操、棒体操、壁体操などが知られて いる。バスタブの中で、肩関節を動かすことも推奨できる。運動療法は、慢性期で痛みが軽減し た後に適応になる。 運動後、痛みが30 分以上続くならば運動量を減らす。運動は10 回~ 20 回行い、1日3 ~ 4 回行う。他動運動は効果がない