















上腕二頭筋長頭腱々炎
1)病態:上腕骨頭結節間溝における上腕二頭筋長頭腱の腱 炎。上腕二頭筋には、長頭腱と短頭腱がある。 長頭腱の起始は肩甲骨の関節上結節、短頭腱の起始 は烏口突起。 長頭腱は上腕骨頭部で、大結節と小結節のつくる結 節間溝を通過する際、折れ曲るように走行を変えてい るので、力学的ストレスを生じやすい
2)分類 ①上腕二頭筋長頭腱々炎 30 才代頃にみられる。投球時のコックアップ期か ら加速期の痛み。 (投球時のリリース期以降は肩関節後方の障害を受 けやすい) ②上腕二頭筋長頭腱々炎を合併している五十肩 40 ~ 50 才代にあっては、上腕二頭筋長頭腱部の炎症が、肩甲上腕関節にまで拡大し、 癒着性関節包炎となって五十肩の症状に移行するケースが多い
3)症状:外転・外旋時の肩関節前面痛、上腕から前腕への放散痛。(他動ROMは正常) 結節間溝の圧痛(+) ヤーガソンテスト、スピードテスト、ストレッチテスト陽性 下記理学テスト陰性であっても、結節間溝からその下方(肘方向)に圧痛があれば、本症ととらえて よい
肩腱板炎
1)病態 肩腱板とは、肩関節付近における棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の総称をいう
棘上筋、棘下筋、小円筋→大結節に停止 肩甲下筋→小結節に停止 大円筋→小結節稜に停止
肩腱板は周囲組織に圧迫されたり、摩擦され たりするため、変性が起こりやすく、炎症が起 こりやすい。 肩腱板のすぐ上には肩峰下滑液包があり、腱 板の炎症は二次的に肩峰下滑液包炎を起こしや すい。 肩峰下滑液包炎があれば夜間痛、関節の腫脹・ 熱感など急性の関節炎症状を併発する
肩関節運動の主動作筋 停止神経上腕骨への作用 三角筋三角筋粗面腋窩神経前部→屈曲、中部→外転、後部→伸展 棘上筋肩甲上外転、外旋 神経 棘下筋大結節外旋 小円筋腋窩神経外旋 大円筋小結節稜肩甲下内旋 神経 肩甲下筋小結節内旋
2)診断(肩腱板炎単独の場合) 痛みによる肩関節の自動運動制限。他動運動は正常 大結節圧痛(+)、有痛孤(+)、ダウバーンサイン(+)
インピンジメント症候群
1)概念 インピンジメントimpingement とは「衝突」のことで、 長期間、上腕外転時に肩峰下滑液包や腱板が烏口肩峰 アーチに圧迫される状態をいう。肩腱板の機能障害で、 投球動作(=野球肩)など、腕を横に大きく振り上げる 際に痛みを生ずる。 インピンジメントという言葉は未消化の状態で、わが国に普及してしまった。肩峰下滑液包炎や肩腱板炎として整理されてきた病像を、別の観点から整理したものといえる
2)症状:外転60 ~ 120 度での肩関節運動時痛(肩腱板炎と同じ)