仙腸関節の解剖
仙骨と腸骨のつくる関節を仙腸関節とよぶ。仙腸関節は後方を強靱な骨間仙腸靱帯と後仙腸靱帯で結合されており、可動域が小さい。その関節面は荷重線に対して垂直に近く、荷重に対して剪断力を生じやすい構造をとる。
仙腸関節機能障害の概念
仙腸関節の関節包の遊びは3㎜程度で、中腰になった状態で一番遊びが大きい。この姿勢で、重い物を持ったり、捻ったりなどの異常な外圧がかかると、関節の遊びを越えて、関節面は少しずれた状態になる。この状態のまま上体を伸ばすような、遊びの少ない位置にもどった時、関節は少しずれた状態のままロックされ、可動性を失われる。するとこの関節に関係する筋肉に次第にスパズムが生じて痛むようになる。
症状・診断
仙腸関節自体には知覚神経が分布していないが、仙腸関節の異常可動により、後仙腸靱帯など周囲靭帯が緊張し、仙腸関節部の鈍痛を訴える。この痛みは長時間の立位や座位により出現し、時に大腿部、殿部、鼡径部などに関連痛を生じる。横になっていると痛みは消失する。
放散痛部にツボ反応(-) 腰仙部痛を訴えているが、患者自身痛む部がはっきりせず、「ここらあたり」といって、大きく指で円を描 く。圧痛や硬結を探そうとしても特別な反応は発見できない。
静的腰痛である。 立位や座位など長時間同じ姿勢を続けて、はじめて次第に痛みが出てくる。これに対して通常の腰痛は動的腰痛であり、動作時に直ちに痛みが出てくる。
理学テストで明瞭にはでないが仙腸関節部の圧痛(+)である。 ①患者の訴える放散痛部位に、異常は見つからない。 ②仙腸関節部の圧痛(+)
仙腸関節部の圧痛点の把握のしかた
患者によっては、仙腸関節周囲の疼痛を自らの指頭で指摘できることもあるが、圧痛 点を患者自身が見つけられない場合も多い。圧痛点不明な場合、立位にして腹を壁に つける。この状態で仙腸関節周囲を指頭で押圧し、圧痛点を発見する(何カ所か 見つかる)。伏臥位や側臥位でツボ探索してもうまくいかないことが多い。
③理学テスト
伏ニュートンテスト変法 伏臥位で患側の仙腸関節に両手を当て圧迫を加え、 仙腸関節部の痛みを誘発させる。
パトリックテスト
ゲインズレンテスト 仰臥位で非検査側の膝をかかえ、股関節を最大屈曲させ、骨盤と腰椎を固定する。検査側の下肢を下垂させて、仙腸関節にストレスをかけて疼痛の有無をみる。
ワンフィンガーテスト 自覚痛の最も強い部を、患者自身の指頭で指し示すよう指示する。患者が仙腸関節部を指さすものを陽性とする。