2.頸部神経根症
1)病態:頸部神経の根部における圧迫
硬膜管の中の脊髄から神経が枝分かれして椎間孔を
通って脊柱管から出ていく、その枝分かれした部分
を「神経根」とよぶ。
2)代表疾患
脱出した髄核による神経根圧迫→頸椎椎間板ヘルニア(30~40才代)、骨棘による神経根圧
迫→変形性頸椎症(40才以上)。
腰椎椎間板ヘルニア(20~30才代)
3)症状:頸部痛+上肢の知覚低下(デルマトームに従う)、筋力低下。
上肢痛は、神経根障害の症状ではなく、神経走行途中の絞扼で生ずる。
椎間板ヘルニアの際に、しばしば上肢が痛むのは、多くは筋緊張による神経絞扼障
害が合併した状態である。上肢の知覚低下と痛みは区別して考えること。
4)理学テスト
<第一段階>
神経根圧迫:
ジャクソンテスト
スパーリングテスト
神経根伸展:
イートンテスト
肩押し下げテスト
①ジャクソンテスト
方法:頭をできるだけ背屈させ、検者は両手で頭を下に押さえつける。神経根に圧迫負荷を
加えるテスト。これにより患者の肩、腕、指などに放散痛が起これば陽性である。
意義:頸部神経根症を判定
②スパーリングテスト
方法:頭部を後屈位に側屈させる。検者は患者の後に立ち、両手を組んで頭頂部におき、頭
部に圧迫を加える。初めは軽く、次に強い圧迫を加えるようにする。
患神経根に圧迫負荷を加えるテスト。側の肩(肩甲上部、肩甲間部、肩甲部)や上肢
に痛みやシビレ感の誘発、増悪がみられた場合陽性とする。
意義:頸部神経根症を判定
③イートンテスト
方法:頭を一側に屈し、頭と健側の肩を固定したところで、検者が反対側の上肢を下方へ
引っ張る。患側に上肢を引っ張ると、上肢や手に疼痛が起これば陽性。神経根に伸
展負荷を加えるテスト。上肢に痛みやシビレ感の誘発、増悪がみられた場合に陽性。
連想:イートンテストの姿勢は、「イ」の字に似ている。
意義:頸部神経根症を判定
肩押し下げテスト
方法:患者を座らせて検者の片手で頸椎を健側に側屈させ、他
方の手を肩の上におき、下方へ押し下げる。
意義:上肢の疼痛が誘発または増強されれば陽性で、頸部神経
根症を疑う。
スパーリングイートンジャクソン頸の検査
神経根障害と、神経絞扼障害の鑑別
神経根障害では、神経根症状が出現する。神経根症状では、腱反射低下、筋力低下、
デルマトームに一致した知覚低下をみる。神経絞扼障害とは、神経走行部位における圧迫
症状で、腱反射・筋力低下は正常・知覚低下は生じない。末梢神経分布に一致した痛み
(ピリピリ、ビリビリ)を生ずる。
肺尖部の癌をパンコースト腫瘍(鎖骨の上の意味)とよぶ。パンコースト腫瘍は、腕神経
叢を刺激し、上肢の痛みとしびれが出現する。