1)概念 背腰部の過伸展や捻転により、この部の筋々膜のトリガーが活性化したものである。 脊髄神経後枝が筋膜を貫く部位で、何らかの刺激を受けて痛みを生ずるとする見解もある。 慢性の筋々膜性腰痛の場合、筋膜に囲まれた背筋のコンパートメント内の圧力が高まり、虚血が続き、背筋内の循環障害・疲労物質の蓄積等が原因とする見解もある。
2)腰部の筋と機能 最近では、脊柱起立筋は脊柱を支え、固定するための機能が中心で、寝ている時以外はすべて緊張している状態にあることが知られるようになり、筋筋膜性腰痛との関係は密接でないことが知られるようになった。不正動作ににより突発的に生ずる痛みは、大腰筋、多裂筋、回旋筋の問題。これらの筋群は、腰椎に直接付着しているという共通点がある。多裂筋や回旋筋は短いので、脊椎捻挫の際にモロに損傷を受けやすい。これに対し、起立筋などの長い筋は筋伸縮に余裕があるので衝撃を逃がすことでダメージを受けにくい。
①大腰筋 起始:浅頭は第12胸椎~第4腰椎までの椎体および肋骨突起。深頭は全腰椎の肋骨突起 停止:大腿骨の小転子 支配神経:腰神経叢及び大腿神経 大腿骨から腰椎のそれぞれ全部の間に走る筋である。腸骨筋は骨盤から大腿骨の間に走る 筋肉で、走行途中で大腰筋と同じの束(腱)になり大腿骨に付着しているので、2筋合わせて腸腰筋とよばれる。大腿神経支配。股関節の屈曲(大腿の前方挙上)作用。 大腰筋性の腰痛は、筋筋膜性腰痛の一つに分類できる。中腰姿勢で来院する腰痛患者の典型である。上体を起こすと腰痛増悪し、患者は腰の深部が痛むと訴えるだけで、腰背部に顕著な圧痛が検出できないという特徴がある。
②腰方形筋 肋骨(第12肋骨)から骨盤の間に走る筋。腰神経叢支配。本筋は後腹筋に分類される。 腹筋前腹筋:腹直筋 側腹筋:外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋 後腹筋:腰方形筋
③多裂筋・回旋筋・半棘筋 最深部にある筋で、骨盤もしくは腰椎横突起を起始として、それより上部の腰椎棘突起を結んだ筋。靴ひものような形状となっている。すべて脊髄神経後枝支配。 多裂筋は脊柱伸展の作用があり、腰部で発達している。回旋筋は脊柱回旋の作用があり、胸椎で発達している。半棘筋も脊柱回旋作用であるが、頸椎と胸椎で発達しており、腰椎はない。多裂筋は脊柱伸展の作用があり、腰部で発達している。 棘筋は棘突起間を結ぶ筋で、背部一行の浅層にある。棘筋は脊柱起立筋に所属する。 多裂筋は下部腰痛だけでなく、仙骨部でも発達している。仙椎一行の圧痛は、おそらく多裂 筋由来のものであり、腰部だけでなく、この部の一行刺針により、腰痛を改善できる場合がある。
3)症状・理学テスト ①障害筋は短縮し、保護スパズム状態となっている。これを伸張させる動作で痛みが出現する。 ②障害部筋の緊張や圧痛(+)