2)(前)斜角筋症候群
斜角筋隙(前斜角筋、中斜角筋、第1肋骨上縁で囲
まれた部位)を腕神経叢と鎖骨下動脈が走行してい
る。前斜角筋緊張のため、前斜角筋と中斜角筋の間
で、腕神経叢と鎖骨下動脈が圧迫された状態。
鎖骨下静脈は前斜角筋の前側を通るので、圧迫さ
れることはない。
①モーレーテスト
(モーリーテストともよぶ)
方法:鎖骨上で胸鎖乳突筋停止部の外側にある、前斜角筋を押圧
圧迫した際、圧痛があり同時に疼痛が手に放散するものを陽性
とする。
意義:前斜角筋症候群の検査。
前斜角筋の緊張による腕神経叢圧迫
②アレンテスト
方法:一側の上腕を水平に上げ、肘を直角に曲げ、まず橈骨動脈
の拍動をみる。つぎに頭を強く健側に向けさせ、これにより
脈拍が減弱ないし消失すれば陽性。
意義:前斜角筋症候群の検査。斜角筋の緊張
による鎖骨下動脈の圧迫具合をみている。
③アドソンテスト
方法:頸を後屈し、顔を患側へ向かせ、深呼
吸。すなわち斜角筋を収縮させる動作をさ
せる。
この状態で橈骨動脈の拍動をみる。
意義:橈骨動脈の拍動が減弱ないし消失した
場合を陽性とし、前斜角筋症候群を疑う。
ハルステッドテスト
方法:イートンテストと同様の姿勢をさせ。この時の
橈骨動脈拍動の消失の有無を診る。
意義:イートンでは神経根を伸展して上肢の放散痛を診る(陽性ならば神経根症状を疑う)。
ハルステッドでは橈骨動脈の拍動が減弱ないし消失した場合を陽性とし、前斜角筋症候群を疑う。
3)肋鎖症候群
鎖骨と第1肋骨の間隙から、鎖骨下動・静脈と腕神経
叢が出て上肢に枝を送っている。なんらかの原因により
この間隙が狭くなり、上肢のシビレや痛み、冷えが出て
いる病態。
①エデンテスト
方法:両上肢を後下方に引き下げて(気をつけ姿勢)、
脈の停止と上肢症状の増悪をみる。
意義:鎖骨と第1肋骨の間隙を狭める動作をさせて、腕
神経叢と鎖骨下動脈の圧迫をみている。
連想:エデンテストの別称は、軍隊姿勢テスト。
4)過外転症候群(=小胸筋症候群)
肩関節外転時に小胸筋の烏口突起停止部で鎖骨下動・静脈が圧迫された状態になるもの。
①ライトテスト
方法:患者の後に立ち、両手で左右の手首をつかみ、患者の両上腕を90°外転、肘を曲げ、か
つ手掌を前方に曲げた肢位で、橈骨動脈の拍動の有無を調べる。
意義:小胸筋を伸張させ、肋骨を迫り出す負荷により、過外転症候群の有無をみている。。
1980年頃から、胸郭出口症候群の98%
は、神経系圧迫の問題であって、血管圧
迫の病態はわずかだとする認識に変化し
た。
脈の消失を診るテスト(ライトテスト
やアドソンテスト)の有用性は否定され
ている(健常者でもよく陽性になる)