3.顔面施術が可能な場合の治療
1)神経が骨孔から浅層に出る部を刺激
ワレーの圧痛点の部に対し、細針にて静かに刺入する。孔に入れるには、孔の開口
する傾きを理解し、傾斜に沿った角度で刺針する。
①眼窩上神経ブロック
適応:眼窩上神経神経痛(三叉神経第1枝)
位置:眼窩切痕部で、正中から2.5~3㎝外方を取穴。眉中になる。
刺針:直刺
②眼窩下神経ブロック
適応:眼窩下神経痛(三叉神経第2枝)
位置:眼窩下孔部。眼窩の下縁中央から下1㎝の部にとる。
刺針:成書には20°外方(耳方向)、40°上方(頭方向)に刺入とあるが、同側の外眼角に
向けて刺入するとよく、針尖は下眼窩裂に達する。
③おとがい孔(おとがい神経ブロック)
適応:おとがい神経痛(三叉神経第3枝)
位置:口角(第2小臼歯の位置で、正中か
ら数えて5番目の歯)の下方で、顎幅の
中央。
刺針:45°下方(顎方向)に向けて45°の
角度で斜刺する。
2)鍼灸治療独自の治療点
①第1枝痛
前頭筋の緊張を緩和することで痛みを緩和する。
②第2枝痛
下顎骨関節突起の後縁から前方へ3㎝、頬骨弓下縁の下1㎝に刺入点を定める。頬部の
皮膚に対し、30度の角度で外眼角に向け、4㎝刺入翼口蓋神経(三叉神経第2枝の分枝)刺激
③第3枝痛
下歯痛の治療:治療側を上にした側臥位、歯にタオル等を
咬ませておく。下顎角から下顎骨後縁をなで上げると、骨の
欠目を感じ、ゴリゴリした筋肉様のものがある。この下の陥
凹部を穴とする。
針先が口角方向に向かうように刺入、この時に針は下顎骨内縁をかすめ
るようにする。針響は下歯に得るようにするが、もし耳中に響いた場合(これが耳鳴の
治療になる)には、針尖をやや下方に向ける。響きを得たら徐々に抜除する。
三叉神経第3枝の枝の下歯槽神経が下顎孔に入る部を刺激
下耳痕穴から直刺2㎝で舌咽神経の枝の鼓室神経(鼓膜を知覚支配)を刺激でき、耳中に響く。
耳に響く場合には上向き加減に刺入したことになり、耳鳴・耳痛に使用する。
顔面神経痙攣の鍼灸治療
顔面痙攣に対する針灸は、これまで効果的なものは報告されず、顔面痙攣は鍼灸不適応と考
えられてきた。しかし20年ほど前、ペインクリニックにおいて考案され
たのを受け、鍼灸においても(茎乳突孔)から顔面神経直接刺激する方法が発表された。
①治療側を上にした側臥位。
②茎状突起に針先を誘導する
③針先が骨に命中したら、3分間のコツコツとタッピング刺激を与える。その後7分間置針し、再びふた3分間タッピング刺激。総治療時間は20分間程度。
上記の治療を行っても、痙攣を軽減する期間は数日間であり、ボツリヌス菌毒の筋注も有効。
神経ブロック穿刺圧迫法
顔面神経の主幹を神経が頭蓋底を出た部位で針を使って圧迫する治療法を創案した。痙攣が止まっている平均有効期間は9.3 カ月。痙攣が再発してもすぐにブロック前の強さ
にもどるのではないので,年に1 回程度治療を行う症例が大部分である。ブロック後の痺期間は平均1.3カ月で70%以上が1ヶ月以内に麻痺は回復する。