3.前頭部の三叉神経刺激
上鼻甲介付近の炎症や腫脹では、三叉神経を介して頭重が起こるとされる。慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎の者は、前頭部の前頭髪際付近に圧痛がみられることが多く、圧痛があればこの圧痛点(顖会や上星)に長期的に透熱灸をすることが多い。
これは三叉神経を刺激することで、鼻腔や副鼻腔に持続反復刺激を与えている。頭髪中に施灸するので、灸痕が目立たず長期施灸を可能としている。施灸により、長期間良好な状態を保つ間に、鼻粘膜の修復が行われ、施灸中止後も、症状は消失状態を保つことができる。
4.大後頭神経刺激
三叉神経線維は三叉神経脊髄路というルートを持っている。外部から入力された感覚は、三叉神経節を経た後、三叉神経脊髄路を経由して、すなわち一度、第2頸髄の高さまで一度下行してから、再び上行して脳に行く。
下行時には大後頭神経と連絡しているので、大後頭神経と三叉神経の間に、密接な関係を生ずる。眼精疲労時には後頭部痛も生じやすいのもこの理由による。天柱に刺針すると、三叉神経刺激症状(特に第1枝の眼神経)に影響を与える。大後頭神経が興奮して三叉神経症状を生じたものを、大後頭神経-三叉神経症候群とよび、ペインクリニックでの通称も天柱症候群とよばれる。
針灸臨床では、眼精疲労、鼻閉に天柱刺針を用いることが多い。
慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎の基本鍼灸治療
<三叉神経第1枝刺激>
前頭部透熱灸(代表:上星)
慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎項部刺針(代表:天柱)
<局所刺激> <大後頭神経刺激>
印堂隔物灸
攅竹→睛明水平刺
夾鼻刺針
鼻アレルギーの鍼灸治療
鼻アレルギーの3大症状は、鼻閉・水様性鼻汁・反復性くしゃみである。スギ花粉症ではこれに加えて、鼻から眼にかけての掻痒感が生ずる。
鼻アレルギーは、アレルゲンに対して、鼻粘膜が非常に過敏に反応することで起こるが、鼻アレルギー者に頸部交感神経刺針を行うと、ヒスタミンに対する反応性が低下するものの、皮内テストやIgE抗体量には変化がみられない。このことから頸部交感神経刺針は、鼻粘膜過敏性の抑制効果があるといえる
一方、鼻粘膜刺激を目的に、鼻周囲を施術してもあまり効果がないことが指摘されている。
1.頸部交感神経幹近傍刺針
1)部位:マクラをはずしての仰臥位。輪状軟骨(C6椎体レベルにある)の高さで、胸鎖乳突筋前縁部に術者の示指・中指をあて、胸鎖乳突筋を外側に押し分けながら筋肉間に指先をもぐりこませるようにして、第6頸椎横突起前結節を触知する。この部は豆粒のような感触で、頸椎中最大であって、もぐり込ませた指を体軸方向に動かすと、最も突出しているのを感じとることができる。
2)刺針:寸6#3を用いて、直刺でやや内側に向け、横突起基部に当たるまで刺入する。
3)手技:雀啄術または通電。雀啄では、振幅5㎜、1~2ヘルツの頻度で5~7分行う。通電は1ヘルツで7分通電。置針でも効果ある。
2.治喘
大椎の5分外方に治喘をとる。星状神経節とほぼ同じ高さにあることから、この部からの深刺は、間接的に星状神経節刺激になると推定される