慢性副鼻腔炎
鼻炎と副鼻腔炎の鍼灸治療
慢性鼻炎があれば慢性副鼻腔炎も存在している。両者の共通症状は、鼻汁(粘性~黄色粘性)と鼻閉である。ただし慢性副鼻腔炎では前頭部鈍痛や頬部鈍痛を訴えるのに対し、慢性鼻炎では、これらの訴えに乏しい。
鼻炎と副鼻腔炎の治療は、針灸では治療は同じように行ってよい。鼻炎と副鼻腔炎とは、鼻粘膜に連続性があり、神経支配も同一なためである。施灸治療を中心に、半月~2ヶ月の反復刺激(自宅施灸)を与えて効果が生まれる。
1.鼻周囲の三叉神経刺激
鼻腔と副鼻腔は三叉神経第1枝と第2枝により支配される。これらの神経を刺激すれば、鼻交感神経を緊張させ、血管収縮を引き起こすので、鼻閉や鼻汁に対しても効果がある。ただしこの効果は一過性なので、慢性症には前頭への長期施灸が必要である。
1)第1枝刺激
前頭神経→鼻毛様体神経:<A>「睛明」
(印堂穴や鼻根穴も同様)、<B>「夾鼻」
鼻毛様体神経:知覚神経で鼻背、鼻粘膜(嗅覚部を除く)、涙腺に分布。
揮発成分を含むワサビを食べると鼻がツーンとし、涙が出るのは、鼻毛様体神経刺激による。
鼻出血の98%は、キーゼルバッハ部位(外鼻孔から1㎝奥)から起こる。本部位は、毛細血管の集合体。
①攅竹から睛明方向への水平刺刺針:眉毛内端を取穴。左右2本の針を用いる。ある程度刺入していくと鼻に刺針側の鼻に響く。深刺しすぎると針先は睛明に近付き、上眼窩内刺針と同様に皮下出血を起こしやすい。
印堂から鼻根方向に刺入しても同様の意味がある。印堂穴には隔物灸も多用する
②挟鼻
刺針:鼻翼の上方の陥凹部で鼻骨の外縁
中央を取穴し直刺。
2)第2枝刺激
下眼窩神経→外鼻枝:<C>「迎香」
外鼻枝は、鼻前庭粘膜に分布するが、鼻腔には分布しない。ゆえに迎香刺激はキーゼルバッハ部からの鼻出血には効果的だが、鼻炎や副鼻腔炎に対する治療効果に乏しい。
①迎香
刺針:鼻孔の外方5分。鼻翼の外側にできる皺中にとる。直刺。
2.項部筋、側頸部筋のコリを緩める
圧痛のある項部の頭半棘筋や頭板状筋や、側頸部の前・中斜角筋等に微量ス
テロイド希釈液を注射することで、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが改善することが多いと報告している。同様のことを針治療で行うには、圧痛のある筋を伸張状態させた姿勢で刺針する。これは神経・筋の促通作用を利用した方法である。