慢性コンパートメント症候群、筋区画症候群
1)病態
下腿には脛骨と腓骨があり、この間には骨間膜がある。さらに筋膜にも筋間中隔とよばれる膜がある。これらによって下腿の筋は4つの区画(コンパートメント)に分かれる。トレーニングを重ねて筋が発達してきた場合でも、筋膜はそれに応じてすぐには拡大しないため、筋が入っている各区画の圧が上昇する。すると筋へ十分な血液の供給ができなくなって筋の虚血が生じる。
急性コンパートメント症候群:脛骨の骨折、打撲、筋断裂などの急性外傷がきっかけとなり、組織圧が上
昇するものをいう。急激な強い痛み、しびれ、うずきを訴える。これらに対しては外科的緊急処置
(筋膜切開して減圧)が必要となる。
2)症状
初期ではスポーツ時、虚血性の強度の筋痛。やがて安静時も痛くなる。障害区画の伸張動作
で痛みが出現する。該当区画の神経絞扼による知覚障害も生ずる。ただし動脈本幹は閉塞され
ないので、足背動脈等の拍動は触知可能である。
シンスプリントは、慢性コンパートメント症候群とは異なり、神経症状は出現しない。
障害区画痛む動作(障害筋)
- 前方コンパートメント母指底曲時(前脛骨筋、長母指伸筋)
②外側コンパートメント足内反時(長・短腓骨筋)
③浅後方コンパートメント足関節背屈時(ヒラメ筋、腓腹筋)
④深後方コンパートメント母指背屈時(長母指屈筋、後脛骨筋)3)治療と予後
まず安静と、下腿部分の高挙を行う。症状が強い時は、ギプスなどのしっかりした固定や、
入院による徹底的な安静が必要。進行した状態で放って置くと、筋が壊死してくるので、筋膜
切開手術が必要なこともある鍼灸。は、軽度の慢性コンパートメント症候群に関しては、症状部に刺針する。中程度以上のものは鍼灸不適応。
こむらがえり
腓腹筋痙攣
1)病態生理
有痛性痙攣は、筋肉内に分布する運動神経終末部の自発性興奮に始まる。
筋線維の一部が強く収縮すると、収縮した筋線維と収縮しない筋線維の間にずれの力が働き、
筋肉の痛覚線維を刺激して、痙攣と痛みが生じる。
2)原因
①夏の暑い盛り、激しい筋肉労働により大量の汗をかいたときに食塩をとらない場合。すなわ
ち脱水時。
②睡眠中の夜間痙攣は、足の他動的伸展でによって生じる。通常、片足などの片側で生じる。
昼間ではなく、寝ているときに脚がつる原因は、伏臥位睡眠時や仰臥位時の重い掛け布団に
よる長時間の足関節強制底屈状態により、腓腹筋が長時間短縮しているためだとする見解が
ある。
3)治療
①睡眠時の強制底屈姿勢が原因であるとすれば、改善策としては、寝るとき
に、クッションなどを足底にあてて寝てるか、側臥位で寝る対策がある。
②腰椎変性疾患に伴うこむら返りで、深腓骨神経ブロックでこむら返りの発生頻度が減少
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