エルブ麻痺(分娩麻痺) クルンプケ麻痺
障害部位上位神経幹障害(C5、C6神経) 下位神経幹障害(C8、Th1神経)
主な原因肩甲部の下方牽引。分娩上腕の外転挙上での牽引
主症状手首から先は動くが肩や肘が動かない。手首から先は動かないが肩や肘は動く。
C5:肩の挙上困難(三角筋麻痺) 母指球筋・小指球筋・骨間筋の萎縮
C6:前腕屈曲困難(上腕二頭筋麻痺) ホルネル徴候(+)
ホルネル徴候
眼に対する交感神経支配の消失状態の所見。頸部交感神経機能低下により縮瞳になる。
また交感神経は上瞼板筋を支配するので、眼瞼下垂になる。
ホルネル症候の3大徴候は、縮瞳・眼球後退・眼裂狭小。
ホルネル症候群は、眼の交感神経機能低下や星状神経ブロック時に出現する。星状神経節ブロックは、
バレリュー症候群時の頸部交感神経刺激症状の改善目的や、顔面神経麻痺時の頭蓋内血流改善目的で実施
する。眼瞼下垂をおこす疾患は次の3つある。①ホルネル症候群(片側軽度眼瞼下垂+縮瞳)
②動眼神経麻痺(片側眼瞼下垂+散瞳)、重症筋無力症(両側眼瞼下垂。瞳孔は正常)
3)腕神経叢刺激点
腕神経叢刺激点には、鎖骨上部で行うエルブ点と、腋窩部で行う極泉がある。
①エルブ点
位置:3つの神経幹が走行する部。仰臥位、治療側の反対に顔を向かせる。鎖骨の内側1/3
の部位の鎖骨上縁から3㎝上方の頸側を取穴する。
刺針:寸6#3の針を用いて直刺し、上肢への針響を得る。橈骨・正中・尺骨・筋皮神経刺
激になる。(気胸に注意)
②極泉(心)移動穴
位置:仰臥位で肩関節外転90度、肘屈曲45度。腋窩中央に通常の極泉をとる。そこから
1寸上腕寄りに穴を求める。3つの神経束が走行する部。
刺針:寸6#3で、肘方向に向けて直刺5分~1寸。上下に針を素早く雀啄。電撃様針響を
上肢に得る。橈骨・正中・尺骨・筋皮神経刺激になる。
2.橈骨神経麻痺
1)橈骨神経の走行
①上腕後側から外側部の橈骨神経溝を走行(代表穴は消濼・手五里)しつつ、曲池に向かう。
橈骨神経は前腕の全ての伸筋、外転筋、回外筋を運動支配し、手関節や指関節の動きに関与
する。例外は腕橈骨筋(肘関節屈曲作用)。
→上腕外側中央部分が長時間圧迫(腕マクラ、泥酔など)で橈骨神経高位麻痺。
②前腕部分では、前腕橈側で大腸経に沿って橈骨神経浅枝(皮枝)が通り、該当部分の皮膚知
覚を支配する。
→橈骨神経麻痺では、上肢部分の大腸経・三焦経領域の軽度知覚低下を生ずる。
明瞭な知覚低下は、合谷周囲に限局する(固有支配)。
③前腕背面の三焦経に沿っては橈骨神経深枝(筋枝=後骨間神経とよぶ)が通る。筋枝は、前
腕の全ての伸筋を運動支配し、手関節伸展(=長・短橈側手根伸筋)と中手指節関節の
伸展(=指伸筋)を支配し、母指の伸展(=短母指伸筋)と外転(=長母指伸筋)を運動
支配する。
橈骨神経は、手の内在筋(手部に起始をもつ短筋)を支配しない(指症状はあまり現れ
ない)。→前腕の肘1/3部分で、回外筋による絞扼を受けると、橈骨神経低位麻痺。