椎間関節性腰痛
1)病態
急性腰痛:腰を伸ばして上体を振り返った瞬間、椎間関節の関節包内にある滑膜が挟まれ、 炎症を起こす。ぎっくり腰を起こす代表的な病態である
慢性腰痛:加齢による椎間関節の変性が基盤になり、急性椎間関節性腰痛の機序で発症する
2)症状 脊髄神経後枝は、背腰殿部において、脊柱を起点として斜め下45°方向に下るので、症状 もこの領域に出現する。 椎間関節の刺激は、結局椎間関節関節包支配である脊髄神経後枝内側枝の興奮となって痛み を感受し、脊髄神経後枝支配領域の筋と皮膚に痛みと筋緊張をもたらす。 後枝内側枝は椎間関節を知覚支配する。 後枝外側枝は、多裂筋や起立筋、腰背部皮膚を運動・知覚支配する
椎間板性腰痛
1)病態
前屈時や、腰をかがめ、不用意に重量 物を持った瞬間、椎間板内圧が瞬間的に 高まり、元々から変形していた椎間板線 維輪に亀裂が入る。これにより脊髄神経 前枝から分岐し、線維輪に付着している 椎骨洞神経が刺激を受ける。椎間板の線維輪は、本来知覚がないが、過 度の負荷などで線維輪に変性が生じると、 神経線維が椎間板の線維輪外層まで入り込 んでくる
2)症状
ギックリ腰の最多原因であるとする 見解や、慢性腰痛の40%が本症との見 解もある。若年者(とくにスポーツに おける繰り返しの負荷)中高年の腰痛 ともにみられる。 正中線付近の痛みを訴える。 神経根症状ないが、脊髄神経前枝刺激として、下肢症状を伴うことも多い)
脊椎分離症と脊椎分離すべり症
1)病態
正常脊椎でも、仙椎の関節面は、水平線から30°傾斜している。この傾斜角を腰仙角とよ ぶ。この傾斜があるためL5椎体は元来前方への力学ストレスが作用している。脊椎の上関節 突起と下関節突起の間、すなわち椎弓根部が離れて椎体が分離したものを脊椎分離症とよぶ。 なお脊椎分離した者は、無症状者でも5%にみられるが、スポーツ選手は発生頻度が高い。 腰部椎間板の変性が著明になると、分離のある脊椎が、これより上位の椎体とともに辷って いくことがある。これを脊椎分離辷り症とよぶ。いずれもL4-L5間に好発する。 少年野球など、10代前半の頃の激しい運動が、分離・辷りの原因とされる
2)症状
本症はX線にて診断されるが、多くの場合、患者の現在かかえる腰痛とは直接関係がない。 本症特有の症状はないが、腰椎前彎が増強するので、それにより筋々膜性腰痛や椎間関節性 腰痛が生じることがある。 3)所見 階段変形、腰痛前彎の増強