①眼球突出:眼窩内の外眼筋や眼窩脂肪組織など、球後組織増殖により、眼球が前方に押し出
される。
②上眼瞼後退:甲状腺ホルモンが平滑筋を刺激。その影響で、ミューラー筋(交感神経支配)
も収縮し、まぶたが吊り上がったようになる。下を向いたときに白目の部分が大きく見
える。
眼科の鍼灸治療
眼科領域の鍼灸治療は、疾患に関係なく一律に、局所・近隣刺激として眼の周囲やこめかみ部、
あるいは項部を刺激することで、眼周囲筋の緊張緩和と血流改善、そして交感神経優位に導くこと
を狙いとしている。
中国では、網膜疾患や眼底疾患に対しては、眼窩奥にある上眼窩裂(=睛明)や下眼窩裂
(=球後)の刺激も行われ、それぞれ30分程度の置針が行われることが多い。
1.眼精疲労の鍼灸治療
休息しても改善しない眼精疲労では、器質的疾患が疑われるので眼科専門医に依頼する。
ただし眼精疲労の大部分は鍼灸の最適応症である
1)頭部固定のための頸部筋コリに対する治療
頭位が不安定な状態では、対象をしっかりと見ることが難しくなる。頭を支持するのは頭蓋
骨に停止をもつ頸部筋であり、僧帽筋・頭板状筋・頭半棘筋・後頭下筋(大小後頭直筋と上下
頭斜筋の総称)がこれに該当する。この中で重要なのが頭半棘筋と後頭下筋である。
①後頭下筋への刺針(天柱)
頭蓋骨のブレ防止は、頚部とくに後頭骨~C2椎体間にある後頭下筋による微調整によ
るので、後頭下筋への過度負荷は頭位を固定できず視点が定まりにくくなり、眼精疲労を
生ずる。後頭下筋は、後頭下神経支配を受けている。
後頭下神経は、後頭骨-C1椎体間から出るC1頸神経後枝の別称で、純運動性の神経で
痛みは出ないがコリが生ずる。上天柱から、骨面に達するほどの深刺が適する。
②頭半棘筋への刺針(天柱、風池)
頭半棘筋が弛緩すると頭を支えていられなくなる。電車のシートに座って居眠りができる
のは、頭半棘筋がまだ頭蓋を支持しているからであり、眠りが深くなると座っていられなく
なる。頸部と頭部の境界にある経穴への施術は、天柱や風池から行うが、頭半棘筋中に入る
程度の深刺が必要である。
天柱穴はC1C2椎体間外方1.3 寸(教科書では後頭骨とC1椎体間の外方1.3 寸)なの
で、大後頭神経の適切な刺激点となる。大後頭神経は、第2頸神経後枝の別称であり、深頸
筋を運動性に支配する一方、後頭部から頭頂部の膀胱経ルートの皮膚知覚を支配する混合性
の神経である。