2)鼓腸の分類
①呑気症(空気嚥下症)
どんき
食事の際の空気嚥下のほか、緊張すると唾を飲み込む回数が増える傾向にあり、この時、唾液とともに空気も嚥下し、胃泡が次第に大きくなる。主症状は食後の心窩部膨満感、おくび多発。胃にあるガスはゲップとなり、腸内のガスはおならとなる。
炭酸飲料を飲んだ後に出るゲップを利用し、胃泡中の空気を口から出すとよいという報告がある。
②脾弯曲症候群と肝湾曲症候群
食事の後でS状結腸が強く収縮して腸内ガスや糞便の通過を妨げると、左脾結腸彎曲部(横行結腸が下行結腸に移行する部)や肝湾曲部が伸展され痛みが現れる。過敏性腸症候群の一種。
持久走時に生ずるの脇腹痛の機序と対処法
この病態生理的機序は、ランニングして脇腹が痛くなった者を、立位の状態で撮影できるMRIで腹部撮影することで、痛む原因が明らかになった。持久走中、大腸の蠕動運動が小さくなる一方、走る振動によって腹部で腸全体が大きく揺れるため、大腸内のガスが大腸の上部に上昇する。その際に大腸の左右の曲がり角(肝彎曲部や脾彎曲部)にガスが溜まりやすく、このガス塊が周囲の神経に刺激を与え強く痛むようになるという。運動を止めると大腸が蠕動を再開するので、ガスが分散し、痛みがなくなる。脇腹が痛くなったら、ランニングしながらでも、痛くなった側の上肢を上へ挙げるというもの。背中を痛くない側に横に反らすようにすると、さらに効果が高まるとの。この動作
により、ガス塊が分散した結果であろう
③小腸の栄養吸収力低下
小腸の栄養吸収力が低下すると、大腸に栄養分が入る。それを養分として腸内細菌が異常増殖し、これにともなって大腸内のガス貯留増大することがある。
3)イレウス(腸閉塞)との鑑別
①イレウスとは:腸の中を便が流れなくなり、停滞する状態である。
②機械的イレウス
鼓腸+腹痛+嘔吐では、機械的イレウスを考える。約90%はガンなどの腫瘍や潰瘍による狭窄、術後の癒着などで腸が詰るために起こる。閉塞の程度が強いと、腸の血液循環が悪化し、腸管の壊死を来たす絞扼性イレウスになる。絞扼性イレウスの症状は激烈な腹痛であり、緊急手術を要する。症状は腹部膨満感と嘔吐で、ひどくなると吐物に便臭を感じる。腹部単純X線写真で特徴ある鏡面像(ニボー)がみられる。
③機能的イレウス
腹部手術後や腹膜炎で一過性に起こる。腸が詰っていないにもかかわらず、内容物が停滞して動かない状態をいう。機能性イレウスでは手術の適応はなく、絶食で輸液療法をおこなえば、多くは症状の改善をみる。術後に排ガスが出ると一安心するのは、イレウスが起きていないことが確認できるため。
機械的イレウス(90%) 機能的イレウス
診断絞扼性(複雑性)イレウス閉塞性(単純性)イレウス麻痺性イレウス
腸管の血行不良あり※腸管の血行不良なし※腸支配の運動神経麻痺
原因腸重積、捻転、脱腸による異物→大腸癌、大腸ポリープ急性腹膜炎、腹部手術後
ヘルニア腸癒着
症状突発的な腸管阻血による激腹痛、嘔吐、腹部膨満、蠕動不穏、排便・排ガス消失
烈な腹痛、嘔吐閉塞性イレウスでは、グル音は増強し、
→壊死性腹膜炎機能性イレウスではグル音消失する。
処置腸重責では高圧浣腸、腸閉塞による悪循環防止の意原疾患の治療ないし緊急手術味で輸液、抗生物質投与※手術対象にならない
→ 改善ない場合は手術