婦人科の主要疾患
1.子宮筋腫
1)原因
子宮平滑筋にできた良性腫瘍。エストロゲン分泌により子宮筋腫が大きくなる。
2)一般事項
①子宮体部と子宮頸部にできる。子宮体部が多い(子宮癌は子宮頸部の方が多い)
②中年女性に多い。女性の20%が40才までに子宮筋腫になるが、大半の者は臨床
症状は現われない。自覚症状がなければ、放置していても問題はあまりない。
③卵巣が機能しなくなる更年期以降は、子宮と子宮筋腫ともに萎縮する。
3)症状
①月経痛:子宮壁に筋腫ができ、子宮平滑筋の過緊張が生ずる場合。
②他臓器圧迫:他臓器を圧迫する程度に子宮筋腫が増大した場合。
症状は頻尿が最も多い。他に便秘、腰痛、腹痛など。
4)筋腫の部位別の症状
子宮内面にできた筋腫ほど症状は強い。
主症状は、過多月経(→結果的に貧血)、月経
困難、ときに不正出血。
①漿膜下筋腫:袋外側にできる。弱い症状
②筋層内筋腫:最も高頻度。中等度の症状
③粘膜下筋腫:袋内側にできる。強い症状
5)治療
小さいうちは放置。機能障害が起これば摘出手術(婦人科手術の8割以上を占める)。
2.子宮癌
1)分類と特徴
わが国では、子宮体癌よりも子宮頚癌が多い。
①子宮頸癌:外因性(性生活)に起因。4 0~5 0歳の経産婦に多い。
大部分は扁平上皮癌。近年減少傾向。
検診時に内診鏡(コルボスコープ診)で容易に発見しやすい。
子宮頸癌に対するワクチンについて
子宮頸癌の原因は、HPV(ヒトパピローマウィルス)にあることが明らかになった。HPV自
体は珍しくなく、性交経験のある女性のほとんどは一度は感染するが、9割の者は免疫によりウィ
ルスが消滅する。残りの1割が残存し、長期感染者の0.15%に子宮頸癌が発生する。
我が国の場合、ハイリスクHPV感染による子宮頸癌は6割である。子宮頸癌ワクチンにより、
ハイリスクHPV感染を予防できる(すでに感染している者には効果ない)。このワクチンは3回
接種する必要があり、現在自費で約5万円かかるため、現在、公費負担による接種の運動が盛り上
がりつつある。
②子宮体癌:内因性(遺伝的体質)に起因。5 0~6 0歳の未産婦に多い。
大部分は腺癌が多い。近年増加傾向。子宮頸癌に比べて発見しづらい。
2)症状
不正出血および血性帯下(この2つが最も重要な症状)、過多月経
ほかに臓器圧迫症状(頻尿、排尿困難、便秘、腰痛、下肢痛など)
3.子宮内膜症
1)一般事項
①20歳代~30歳代前半の生殖年齢の婦人に多い。
②続発性月経困難症の原疾患となる。
2)原因
子宮内膜類似の細胞が、子宮内膜以外
の場所に発生し、そこで活動(月経時の
たびに出血)してしまう。
子宮内膜症が発生しやすい場所は、卵巣や
子宮、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼ
み)、膀胱や直腸など。