②ウィルス感染説
風邪をひいて治って10日ほどしたら出現した難聴・めまいでは、ウィルス感染後に生じた聴神経炎(第8脳神経)を考える。
3)治療
ステロイド点滴、高圧酸素療法などを実施。突発性難聴は、治療可能な唯一の感音性難聴である。ただし神経が変性してしまう以前(発症後2週間以内)に治療を開始しなければ効果がない。適切に治療を受けた場合の改善率7割、うち完全治癒は3割。3割は治療効果がない。
4)予後
蝸牛神経は再生しないので、神経軸索まで壊された場合には永久に耳は聞こえない。
ステロイド療法で聴力が回復した場合は軸索はまだ生きていたといえる。
3.メニエール病
1)原因と病態生理
内耳で平衡感覚をつかさどるのは三半規管と耳石器である。これらは身体の動きや位置に伴う、管内部にある内リンパ液の動きを、有毛細胞が捉えることで空間における自己の位置や動きを把握している。
しかし内リンパの吸収障害が起こると、内リンパ圧が上昇して内リンパ水腫状態に
なる。この時、難聴・耳鳴が起きている。水腫が一定以上の大きさになると、ライ
スネル膜は破綻し、内リンパ液が外リンパ液に混入し、その瞬間リンパ液の乱流が起
こる。この時、回転性めまい発作が起きている。
しばらくするとライスネル膜は自然修復され、内外のリンパ圧は等しくなるので、症状は寛解するが、数週間~数ヶ月後には、同じ機序で発作を繰り返す。
内リンパ水腫となる原因は、自律神経異常など諸説あったが、2009年12月に、大阪市立大の山根英雄教授らの研究グループにより、「球形嚢内で微小な炭酸カルシウムの耳石が剥離して、内リンパ液の通路をふさいだ結果、内耳が内リンパ水腫になって発症する」との真因をつきとめた(内リンパは、蝸牛にある血管条や半規管でつくられ、内リンパ嚢で吸収)。
40~50才台に好発。性差なし。
球形嚢内で耳石が剥離し、リンパ管を狭窄
↓
内リンパ圧上昇(内リンパ水腫)
↓
蝸牛症状・有毛細胞が過剰刺激されて無意味な信号を発信→耳鳴
・有毛細胞が圧迫されて機能不全→難聴
↓
ライスネル膜が破裂され、内外のリンパ液が乱流・混合
↓
前庭症状:有毛細胞の過剰刺激または片側前庭の機能低下→回転性めまい
2)症状
三主徴は、めまい(回転性)、耳鳴り、難聴
①水圧が上昇して音を感ずる細胞を圧迫→鼓膜からの振動が伝達しにくい→難聴とくに低音性
②水圧上昇し、膜迷路が膨張し、ライスネル膜が破れる→発作性回転性めまい(反復性)
難聴耳鳴は一側性。難聴、耳鳴が同時に起こる。補充現象(+)
内リンパ水腫自体が発作を起こすわけではない。破裂が起こり、内外のリンパの混合によって平衡感覚や聴覚に悪影響を与える。水が引けば、すべての症状が消失する。
めまいは2~3時間程度、ときに半日続く(30分程度で治まるということはない)。
めまい発作は、発作性反復性に起こる。めまい発作が治まり、寛解期に移行すれば、難聴耳鳴も消失する。