2.耳鳴の治療
1)TRT療法
「耳鳴り順応療法」のこと。患者自身の耳鳴の音域を含む雑音が、耳鳴よりも少し小さい音量で流す補聴器のような器械を耳に装着し、音を1日6時間以上聞かせる。耳鳴をなくすのでなく、その音が気にならなくなるように脳をトレーニングする。効果が出るのに半年以上かかり、1~2年続けねばならない。耳鳴軽減と耳鳴やや軽減を併せて有効率約8割。
2)リドカイン療法
リドカイン希釈液+ブドウ糖溶液の静脈注射により、最低でも患者の7割以上が、数分~数時間、耳鳴りの消失をみることが知られている。細胞膜にあるKチャンネルをブロックし、神経の活動を抑制するとされる。
リドカインは局所麻酔剤で、多量に用いると対抗不整脈剤の効能もある。
めまいの診察
1.運動失調について
平衡覚は前庭系のほかに、脊髄系(手足や首の筋肉や関節からの情報。脊髄後索を上行する)と視覚系が関与し、3系統の感覚情報は、すべて延髄の前庭神経核に伝達される。延髄は、これらの情報を総合判断し、身体平衡を保つ。
運動失調とは「筋力は正常だが、運動の協調性(バランス)が失われた状態」と定義される。
運動失調は酩酊時のように、運動時静止時に関係なく「体」で感じる感覚なのに対し。めまいは静止時に「頭」で感じる感覚である。
高次中枢
前庭神経↑↓
内耳(前庭)
視神経
延髄
眼(網膜) (前庭神経核)
→
小脳
後索
←
運動系(筋紡錘・腱紡錘)
1)深部感覚性運動失調
深部感覚障害とは、自分の手足の筋や関節から、位置に関係する情報が脊髄後索の伝導障害(特定の体位時、頸髄部後索の排圧による)のため、脳に正確に伝わらない状態。運動時は眼からの位置情報に頼ることになる。特定の姿勢で誘発され、再現性がある。歩行時には足下をみつめ、踵をたたきつけるような歩行になる。ロンベルグ徴候陽性(閉眼両脚立ち不能)。
代表疾患は脊髄癆。脊髄の前側索障害では、温・痛覚が障害される。代表疾患は脊髄腫瘍。
2)小脳性運動失調
小脳は意図した運動がスムーズにできるよう数種類の筋肉を調整する仕事をしている。
小脳の障害では、意図した位置にうまく手足が運べない、手足が震える、運動を繰り返す際のリズムが悪い、運動開始の遅れなどが生ずる。開眼していても両脚立ちができない(ロンベルク検査実施不能。ゆえにロンベルク徴候陽性とはいえない)
小脳の役割:前庭神経核は、平衡バランスをとるための種々の入力の集合場所であるが、外的環境の変化に対する自己姿勢維持機能しかない。能動的に動き、手足を意のままに動かすには、小脳の働きが必要になる。(小脳障害では酩酊様歩行になる)