今日は、小児肘内障の患者さんが来院され、院長が徒手整復をされましたので、
子どもに多くみられる、「肘内障」について書いていきます。
「急に、ひじのあたりに強い痛みを訴え、腕を動かさなくなり、泣きわめく」
この症状がみられた場合、まずこの「肘内障」を疑います。
例えば、
お母さんと手をつないでいて、子どもが急に転びそうになったとき、子どもの腕をつかんで遊んでいたとき、というように、「手や腕を急に引っ張ったとき」に、発症する場合がほとんどです。
2歳から4歳の幼児に多くみられ、男女差や左右差はありません。
小さい子どもさんにはとても強い痛みで、あまりの痛さに、必ず、と言っていいほど泣きわめきます。
しかし、患部が赤くはれたり、腕が変形している、などといった「見た目の変化は見られない」のが特徴です。
猛烈な痛みに苦しむお子さんを前にしたとき、どういう対応をすればよいでしょうか?
まれに自然と治るケースもありますが、まずは、落ち着いて、医療機関へ行きましょう。
骨折や脱臼の可能性がなく、症状や経過から肘内障が疑われた時は、徒手整復を行います。
靭帯のズレなので、元の位置に戻して処置が完了します。
そのあとは、包帯やテーピングなども必要はありません。
しばらく安静にしていただくだけで、痛みは引いていきます。
しかし、一度はずれてしまった靭帯は、はずれやすくなってしまいますので、
小さいお子さんがいる方は、肘内障の症状、特徴を頭に入れておき、冷静に対応していただきたいです!
また、安静にしていても痛みが長引く場合は、骨折や脱臼も考えられるので、再度医療機関にいってくださいね!
当院では、このような急な症状の疾患にも対応しています。
肘内障の病態
肘が抜けると聞くと、あたかも関節が脱臼してしまって大変な状態ではないかと思ってしまいそうですが
肘関節周辺の腫脹(しゅちょう)(はれ)はなく、X線検査で異常所見もみられません。
また、肘内障は、肘の脱臼と思われがちですが、正確には脱臼ではなく、肘関節の骨と骨をつないでいるバンドの役割を持った細い輪状の靭帯から骨がずれた状態です。
これが「小児肘内障」の状態です。
好発年齢
多くは、5歳以下の子供にみられます。
5歳未満の子どもは、骨や靭帯が未発達なので、尺骨と橈骨をつないでいる靭帯の輪から、橈骨頭がはずれやすい。 くせになってしまったとしても橈骨頭が発達し、靭帯も強くなってくる7歳以降には、ほとんど起こらなくなる。
肘内障の症状
突然痛がって泣き出します。
痛がって腕を下げたままで動かさなくなります。ひじを曲げることができません。
無理に動かそうとすると痛む為動かそうとしないが、特に腫れが出たりすることはない。
手を強く引っ張られたときに、腕がだらっとして、まるで「ひじが抜けた」状態になることをいいます。
診断方法
手を急に引っ張ったり、ひねったりした時に起こり
子どもの手を急に引っ張ったりした後、痛がって腕を動かさなくなったら
受傷時の経過でほとんど診断できます。
肘内障の治療
骨折や脱臼の可能性がなく、症状や経過から肘内障が疑われた時は、徒手整復を行います。
整復操作はひじの部分にクリック(カクンなどの音)を伴って整復され、この音が、肘内障が元に戻る音で、手を自由に動かせるようになります
整復の後はいつもと同じように腕をつかってかまいません。
整復後は、肘が曲がるようになり、腕を捻る動作もできています。
普通に過ごして大丈夫です。
一度、肘内障を起こすと、再発しやすくなりますので、子どもの手を強い力で引っ張らないように注意が必要です