1)定義 起立時の低血圧(上が100以下)により、脳貧血症状(めまい、視力障害、ときに 失神)が生ずる病態。起立によって、収縮期血圧が21m Hg以上低下するならば起立性低 血圧としてよい。激しいものでは上の血圧が40m Hg以上降下する
2)病態生理 臥位や座位から急に立位となる時、重力の影響で血液は下半身に下がる。すると脳 貧血が生ずるとともに、心臓へもどる血液が減少し、心臓から打ち出される血液量が 減少して一過性の血圧低下を起こす。ただし通常は自律神経の調整作用により、起立 時には頸動脈球、圧受容体からの刺激が血管運動神経中枢へ達し、瞬時に手足の末梢 小動脈血管壁を収縮させたり、心拍数を増やすことで心臓に戻る血液を増やし、血圧 を上昇させる。つまり交感交感神経緊張不全の時に起立性調節障害が起こる
3)起立試験シェロンテストS c h e l l o n g t e s t 起立時の収縮期血圧が3 0mHg以上低下すると、立ちくらみが出やすくなる。本試験 で降圧の程度と脳貧血や失神などの循環不全の出現を調べる。
①方法 a)安静臥位で血圧と脈拍を測定。 b)10分間起立させ、その間1分ごとに血圧と脈拍を測定 c)再び臥位にして血圧と脈拍が前値に回復する状態を測定
②評価:起立時に上が20~40mHg以上降下したものを陽性とする。 a)脈拍数増加:交感神経性起立性低血圧(s y m p a t h i c o t o n i c型) 静脈収縮が不十分なために静脈系に血液が鬱滞する。動脈の収縮は十分に行われる。 この型では、起立によって最高血圧低下・最低血圧上昇・頻脈がみられる。 b)脈拍数不変:非交感神経性起立性低血圧(a s y m p a t h i c o t o n i c型) 動脈収縮が不十分で、最高血圧と最低血圧がともに下降し、頻脈はみられない。 脈拍数増加型と比べ重症で、シャイ・ドレージャー症候群はこれに属する
4)代表疾患 ①シャイ・ドレージャーShy-Drager 症候群 脳神経の変性により高度の起立性低血圧と徐脈を主とした自律神経症状を示す。 40~50代の男性に多発。起立時にも脈は増えない。予後不良、特定難病指定。 起立性低血圧を主病変とするとするものはシャイ・ドレージャー症候群のみ。 本疾患以外は重大な病因のもとに現れる一つの兆候(二次性低血圧) ②糖尿病、脳梗塞、脳腫瘍、脊髄空洞症 ③老人性起立性低血圧 高齢者では自律神経の感受性が低下するため、起立性低血圧が14%くらいの者 に認められる。糖尿病でも自律神経が障害されるので、本症が起こりやすい。 老人の疾病としては中枢性の平衡障害、多くの場合は椎骨脳底動脈不全を考える。 ④起立性自律神経失調症 若年者では、まず起立性自律神経失調症を考える。朝礼中ひっくりかえるなどの例があ る。末梢血管運動神経の失調(=交感神経失調)で起る。生命に別状なし