①咀嚼筋の障害(咬筋、側頭筋)→顎関節症Ⅰ型
痛みを我慢すれば大きく開口可能。緊張して短縮している咬筋、側頭筋の伸張痛である
顎関節部の圧痛(-)、開口時雑音(-)
②関節円板の脱臼→顎関節症Ⅲ型
この障害のみであれば、顎関節部痛はない。20歳代女性に多い。開口制限あり。最大開口で縦に指が1~2本しか入らない(正常では3~4本入る)
耳門(顎関節部)の圧痛(+)、または外耳口前壁部の圧痛(+)
大きな開口時、関節円板が正常位置に戻るタイプでは、カックンという音を発する
開口とは関係なく常に関節円板がずれているタイプでは、関節音はしない
③変形性顎関節症→顎関節症Ⅳ型
顎を動かすと、シャリシャリ、ゴリゴリ音がする。口を開ける時も噛む時も痛い
(耳介側頭神経痛)。中年以降の女性に多い
<顎関節症の分類>
①顎関節症Ⅰ型筋肉の障害
②顎関節症Ⅱ型関節包や靱帯の障害
③顎関節症Ⅲ型関節円板の障害
④顎関節症Ⅳ型変形性関節症
⑤顎関節症Ⅴ型その他
実際には、上記の合併型が多い
鍼灸適応はⅠ型だとされる
4.開口筋に対する鍼灸治療
鍼灸治療は、顎関節症のⅠ型である咀嚼筋緊張(特に咬筋と外側翼突筋)に対して効果だとされる。すなわち開口制限自体に針灸は効果的でないが、「開口時の痛み」や「痛みによる開口制限」といった、緊張して短縮した閉口筋を、無理に伸張させる際に生ずる、筋の伸張時痛に効果が期待できる。通常数回程度の治療で改善できる
1)咬筋の起始停止への刺針
細針を用い、患者に強く歯をくいしばらせた状態で、咬筋の起始・停止の圧痛点(頬車、大迎、下関など)に刺針、ついで最大開口させた状態で圧痛点に刺針、最後に咬筋の帯状領域圧痛点にを左図のように刺針する
2)側頭筋への刺針
側頭筋も咀嚼筋の一つなので、顎関節症では、頬部とともに側頭部の緊張感を訴えることがあり、これを緊張性頭痛の合併と診断されることもある。
治療は、側頭筋部分に水平刺し、その状態で開口の自動運動を行わせるとよい。
3)外側翼突筋に対する客主人と下関刺
閉口筋は、側頭筋・咬筋・内側翼突筋だが、開口筋は、顎二腹筋と外側翼筋である
開口時、顎が左右にずれる原因は、外側翼突筋の左右の緊張度の違いにある。たとえば、口を開けて顎が左に動くのは、右の外側翼突筋が収縮している。本筋の過緊張は、咬筋過緊張と同時にみられることも多い。
外側翼突筋には上頭と下頭を区別する。外側翼突筋下頭は、顎関節を滑走および左右に動かす働きがある