<正中神経幹走行部位への刺針>
曲沢(心包):肘窩横紋、上腕二頭筋腱の尺側。肘部における正中神経幹走行部位。
郄門(心包):前腕屈筋側中央、手関節前面中央から上5寸。橈側手根屈筋と長掌筋の間。
内関(心包):手関節前面中央から上2寸。橈側手根屈筋腱と長掌筋腱の間をとる。
魚際(大腸):正中神経麻痺の母指球萎縮部位。第1中手骨底と大菱形骨との間。
短母指外転筋(正中神経支配)中に刺入。
3)装具
①短対立副子(指対立保持)
②長対立副子
(指対立保持と手関節固定)
4.尺骨神経麻痺
1)尺骨神経の走行
①上腕内側の浅層を心経に沿って走行(代表穴は青霊)し、肘部管(=小海)に至る。
肘部管で神経絞扼障害を受けることがある。→肘部管症候群(遅発性尺骨神経麻痺)
②前腕部は心・小腸経を走行(代表穴は支正、霊道、神門)し、尺側手根屈筋を運動支配し、
手関節部でギヨン管に入る。ギヨン管部分で尺骨神経絞扼障害を受けることがある。
→ギヨン症候群
③手指部では、手の小指球筋の全部と、中手筋の大部分と、母指内転筋を運動支配する。
④皮枝は手掌と手背の尺側に送る
2)尺骨神経麻痺の分類
高位麻痺(肘より上部の神経絞扼障害)と低位麻痺(肘より末梢の神経絞扼障害)に分類さ
れるが、臨床上は低位麻痺(肘部管症候群やギヨン管症候群)がほとんどである。
3)症状
①知覚麻痺:手の尺側、第4、5指~手背手掌
②運動麻痺(低位麻痺)
a) 母指・示指でモノを挟む力の低下=母指内転筋力低下
☆フローマン徴候(+):母指と示指間での紙をつかもうとする際、母指内転
筋(尺骨神経支配)の筋力低下で紙をつかみにくくなる。代償として短母指屈筋(正
中神経支配、母指末節の屈曲)が働き、母指MP関節を強く屈曲させ、紙をつかもう
とする。
b) 小指球萎縮←小指球の筋すべてを尺骨神経が支配する
掌側骨間筋萎縮←骨間筋を支配:掌側骨間筋麻痺のため、小指内転困難となり、
ポケットに手を入れようとすると、小指がひかっかる。
尺側虫様筋麻痺→MP過伸展、PIPとDIPは屈曲位
虫様筋は、DIPとPIPを伸展しMPを屈曲させる作用がある。また虫様筋は、橈側2筋
は正中神経、尺側2筋は尺骨神経支配。したがって、尺骨神経麻痺時には第4第5
指の、PIPとDIPが屈曲位、MPが過伸展位になる。この指の形と骨間筋萎縮と併せた
形をワシ手とよぶ。
4)尺骨神経高位麻痺の針灸治療
青霊(心):少海から極泉に向かい上3寸。上腕三頭筋(内側頭)中にとる。
5)尺骨神経低位麻痺の鍼灸治療
肘部管症候群 小海(小腸):上腕骨内側上顆と肘頭との間。尺骨神経管部。
神経幹部位
支正(小腸):手を胸に当て、手関節上5寸の尺側手根伸筋の尺側、直接尺骨に触れる処。
神門(心):手関節尺側前面豆状骨の上縁で尺側手根屈筋の橈側。
合谷(大腸):母指内転筋刺針。母指内転筋は第1背骨間筋(尺骨神経)の深層にある。
ただし合谷部皮膚は橈骨神経支配。
中渚(三焦):第4第5中手指節関節間の直上陥中。第4背側骨間筋(尺骨神経)に刺入。
深刺では虫様筋(尺骨神経)に至る。
・少府(心):中渚の裏面。短小指屈筋中に刺入