5)慢性前立腺炎の針灸症例報告
基本的には、前立腺の内臓体壁反射点に施術することになるが、有効率は
あまり高くない。しかし効果あったとの報告もある。
①難治性前立腺炎に下腹部、仙骨部、三陰交の直流通電が効果あった症例
常用穴として、関元、中極、膀胱兪、次髎、三陰交の中から2~3穴を、他に下腹、腰仙、下
肢部から補助穴を1~2穴選び、週1回の針通電(ノイロ通電7秒)と治療後の磁気プラスター
貼付。薬物治療難治例25例に対して上記治療を実施し、著効44%、有効28%、無効28%の結果を
得た。
②慢性前立腺炎に針灸治療が効果合った症例集積
100例の慢性前立腺炎患者に対して、下腹部恥骨上を主な治療点として低周波通電療法を行い、
有効率73%(著効55%、有効18%)の自覚症状軽減。慢性前立腺炎患者の体表所見として
は、恥骨上部の腫脹、腹満、会陽の圧痛、下肢緊張が治療前後に大いに改善。
8.前立腺肥大
1)病態
老化による前立腺内腺が良性増殖し、尿道を圧迫・刺激する。5 0歳以上の男性の2 0
%にみられる。老化現象と男性ホルモンが必須の因子である。
2)症状
膀胱刺激期(第1期):排尿回数増加とくに夜間頻尿
急性尿閉期(第2期):頻尿、排尿困難、尿意切迫・・・・患者に手術を勧める
慢性尿閉期(第3期):自力排尿不能で完全尿閉・・・・・・緊急手術
第2期を残尿発生期ともよび、飲酒、性交、椅子に腰掛けたりする際に、急性完全
尿閉が出現する。第3期を放置すると水腎症→腎障害→尿毒症と進展する。
R/o 前立腺癌
前立腺は、内腺と外腺に分けられる。前立腺肥大は前立腺内腺が増殖するのに対し、前立腺癌
は前立腺外腺が増殖する。老人男性に多い点は共通。
前立腺癌の大半は腺ガンである。前立腺癌は進行が遅く、癌特有の「次第に悪化傾向」もあま
りない。前立腺癌以外で死亡した7 0才台の2~3割に、8 0才台の3~4割に前立腺癌が発見できる。
専門医は直腸内指診やPSA検査で両者を鑑別している。
直腸内指診:前立腺肥大では固さは正常、前立腺癌では石のように硬い。
PSA検査:前立腺特異抗原(腫瘍マーカー)。血液検査しPSA値上昇で前立腺癌を疑う。
前立腺肥大でも値が上昇することがある一方、上昇しない癌もあり、現在有用性が疑問視されている。
3)現代医学的治療
肥大した前立腺では交感神経α受容体の量が増加し、収縮性が亢進しているので、
前立腺肥大Ⅰ期では頻尿(とくに夜間頻尿)になる。前立腺平滑筋の緊張を緩和して
尿道抵抗を低下させるため、交感神経α遮断剤が効果的である。
連想記憶
ノルアドレナリンα:アロンアルファ(瞬間接着剤)→くっつけるもの→収縮
ノルアドレナリンβ:ベータ→ベタ~と広がる感じ→弛緩