平泳ぎ膝
1)病態 平泳ぎの際のキックにより、膝内側側副靱帯に繰り返し張力 が加わり、脛骨付着部炎を生じたもの。 2)症状:内側側副靱帯の脛骨付着部の痛み
オスグッド・シュラッター病
1)病態 成長期(10 ~ 15 才頃)に脛骨粗面の膝蓋靱帯付着 部に、スポーツなどで繰り返し牽引力が加わることで 生ずる軟部組織の炎症。大腿四頭筋による同部の牽引、 外傷や慢性機械的刺激が原因。
2)所見:脛骨粗面部の圧痛、運動痛、腫脹、熱感が みられる。
3)整形での治療 2~3ヶ月、過度の運動を禁止。疼痛が軽減しない ときには膝蓋骨部をくりぬいたサポーター装着が有 効。ジャンパー膝で用いる膝バンドも有効。
膝蓋腱付着部に異常な伸張力が作用するのは、 大腿四頭筋とくに大腿直筋の異常緊張・短縮の結 果なので、大腿直筋起始部にも緊張度が高まって いると考えれば、大腿直筋起始部(下前腸骨棘部)も治療点となり、同部に圧痛 があれば(大腿挙上)させると治療効果が 高まる。 これだけでなく、大腿直筋は羽状筋なので、 同筋の筋腹の圧痛点も施術する必要がある場合が ある
タナ障害(滑膜ヒダ症候群)
1)病態 関節腔の内側には滑膜があるが、胎生期のなごりとして約半数の者の滑膜はヒダ状になって いる。とくに蓋骨内下方と大腿骨の間にあるのが内側膝蓋膜ヒダの部分が障害を受けやすい。 見かけ上、棚に似ていることからタナと呼ばれる部分である。 軽微な外傷(打撲や捻挫など)や膝の酷使によってタナが慢性的に刺激を受け、タナが肥厚、 硬化し、膝蓋骨と大腿骨の間に挟み込まれて症状を引き起こした状態がタナ症候群である。 15~25歳までの若年女性に多い。
2)症状 タナが運動時に膝蓋大腿関節に挟み込まれたときに違和感やひっかかり感を生じる。長期間 放置すると、安静時痛や起立時にも重苦しさが残り、疼痛が持続し、スポーツ活動にも支障を きたす。 膝屈伸時にクリック(“コクン、コクン”と音がする)を生じたり、膝蓋骨内側下部に圧痛、 索状物または腫瘤を触れたりすることがある。
3)整形治療 保存的治療が原則。鎮痛剤、温熱療法、大腿四頭筋のストレッチ、筋力強化訓練を指導。 これで改善しない症例では関節鏡視下でのタナ切除術を検討。
ベーカー嚢腫(膝窩嚢腫)
病理 膝関節周囲には、いくつもの滑液包があり、運動に伴うや靱帯間の摩擦を減らす役割をして いる。その中の一つで、膝窩部の腓腹筋・半膜様筋滑液包が何らかの原因で炎症を起こし、異 常に滑液を産生した結果、膝の裏側の関節腔から滑液包が袋状に飛び出し、膝窩部が水腫状態 になったものをベーカー嚢腫とよぶ。滑液の流れは、膝関節腔から滑液包へと一方通行の流れ になる。変形性膝関節症、関節リウマチ、半月板損傷、膝のオーバーユースといった膝の関節 炎に合併しやすい。50歳以上の者に好発する。
症状 膝窩に卵の大きさ位で、触るとプヨプヨ した水腫がみられる。膝を曲げる際に膝裏 の圧迫感や不快感を生じ、正座や和式トイ レで緊張感がでる。痛みはあまりない。
整形での治療 穿刺して滑液(やや粘性のある透明 黄色液体)を抜き、長時間作用型ステ ロイド薬を注射して滑液の産生を抑 える。しかし再発することが多く、数 日~数週間で元の状態に戻りやすい。 痛みが強いものには、外科手術で滑 液包を切除することもあるが、血管や神経が密で解剖学的に難しく、実施頻度は低い。
鍼灸治療 結局は膝関節の炎症で過剰に産生し貯留した関節液が、膝の動きに妨げにならない部分であ る膝窩部に逃げ込んだ状態であることが多いので、元の疾患である膝OA などの治療を行うこ とが必要である。