筋収縮の種類
等張性筋収縮(アイソメトリック収縮):筋肉の長さが変化しないで力を出す 等尺性筋収縮短縮性筋収縮(コンセントリック収縮):筋肉が短く収縮しながら力を出す 伸張性筋収縮(エキセントリック収縮):筋肉が伸ばされながら力を出す 2)筋力発達トレーニングとエキセントリック収縮 筋力を発達させるためのトレーニング効果の顕 著となる順番は、エキセントリック→コンセント リック→アイソメトリック筋収縮であり、エキセ ントリック収縮が最も強い力が引き出せる。 筋力を発達させるには、筋への多大な負荷をか け、あえて筋に微細な損傷を与え、損傷治癒の過 程で、元の筋線維が太くなる機序を利用する。そ れには最大筋力での筋収縮を行うのが適しており、 エキセントリック収縮を行うことになる。 ボディビルのトレーニングとして高い負荷をか けてのエキセントリック収縮が積極的に利用され ている。 山を下る際の、下腿三頭筋や大腿四頭筋収縮 例 がある。山から帰った翌日から筋痛になることが 多いのは、この下山時のエキセントリック収縮による。 筋の微細損傷を治癒過程で、損傷細胞を白血球のマクロファージが取り込む。その際、発痛 物質を放出する(炎症状態)。この発痛物質が筋膜を刺激すると「遅発性筋痛」が起こる。
筋肉へ伸張性筋収縮負荷の持続 ↓
筋線維の微細損傷 筋線維が部分的に伸びにくい状態になる=筋に硬結出現(自覚痛なし) ↓
その部分が酸素欠乏になる。循環不全 潜在性トリガーポイント形成(運動時痛) ↓
さらなる循環不全の持続→虚血によりブラジキニンなどの疼痛物質を生成 ↓
→それが知覚神経C線維の先端にあるポリモーダル受容器に取込まれる ↓
→痛みとなる 活動性トリガーポイントの形成=遅発性筋痛(自発痛)
痛覚を伝える神経終末は筋膜には接合しているものの筋線維には接合していない。 ゆえに筋線維は痛むことはないが、筋膜は痛む。 伸張性収縮などによって筋肉が過負荷を受けた瞬間(筋線維がミクロレベルで損傷した瞬間) に痛みを感じることはない。ただし筋膜までも損傷するような疾患(肉離れ」など)の場合 は即痛みを伴う。 遅発性筋痛とは、運動終了後、しばらくしてから感じる筋痛のことで、一般的な筋肉痛は、 遅発性筋痛に分類される。 痛みの原因は筋・筋膜にあると考えがちだが、実はトリガーポイントの活性化にある。
腱付着部症とトリガーポイント
腱や靱帯が骨に付着している部分を、エンテーシスとよぶ。そこが引っ張られるこ とで生じる障害を、エンテソパチーとよぶ。 筋が緊張し、短縮すると腱に加わる牽引力は増し、とくに構造的に脆弱な腱付着部に大きな負 担が加わる。腱付着部に微小外傷が生じ、その発生と修復のバランスが崩れることで症状が引き 起こされる。
1)タウトバンド(硬くて痛い筋線維)の存在 これが狭義の筋筋膜性疼痛である。タウトバンド中の一点にTPsがある。
2)CTrP(セントラルトリガーポイント) 筋腹にある。そこには運動終板(=モーターポイント)がある。筋が緊張(=短縮)すると、 腱にかかる負担(牽引力)が増える。
3)ATrP(アタッチメントトリガーポイント:2つの組織の間(筋と腱、腱と骨)
トリガーポイントへの鍼刺激の狙い
ツボ反応には様々な種類があるが、トリガーポイント治療では、各筋の関連痛パターンを把握す るとともに、実地においては筋腹部・筋腱移行部・腱の骨付着部における硬結を発見することから 発見から始まる。一つの筋腹部に硬結を発見したら、その延長上にある筋腱接合部や腱付着部も探 るべきである。長い筋においては索状の筋緊張部位を探し、その中に存在する筋硬結を探す。 硬結を押圧したり硬結部に刺針して、遠隔部に響くのであれば、それはトリガーポイントであろ う。押圧部や刺針部に限局して響くのであればトリガーポイントではないが、鍼治療の良い点は、 薬剤を使った神経ブロックとは異なり、何ヶ所も部位を変えて刺針できることである
トリガーポイント鍼刺激の目的は次のようになる。
1)感作したポリモーダル受容器をより強く興奮させることで、内因性の鎮痛系をより効率的に 賦活させる 2)ポリモーダル受容器の末端から神経ペプチドを放出し、局所の血管拡張をもたらし血流を改 善させる 3)上記方法により、TPsの不活性化を目指す。治療によってTPsを消失させることは困難だが筋 中の血行が良い状態に保つならば、TPsは再活性化しない。