扁桃体の暴走がうつの原因
脳の感情に関わる領域は大脳辺縁系です。その中心となっているのが扁桃体です
うつ病の人では、脳の一部が委縮する。 脳の委縮を引き起こす原因は、「扁桃体(へんとうたい)」。 扁桃体が活動すると、恐怖や不安、悲しみなどの感情が生まれます。 うつ病の患者では、健康な人よりも、扁桃体の活動が強くなっているのが確認される
うつ病のメカニズム
強い不安や恐怖などが続くと、扁桃体が過剰に働く
全身に、ストレスホルモンが大量に分泌される
この過剰なストレスホルモンが脳に及ぶと、神経細胞に必要な栄養が減少
この状態が続くと、神経細胞が栄養不足で縮んでしまう
脳が委縮 意欲や行動の低下を招く
扁桃体を暴走させるもの
天敵
防衛本能がうつ病にかかわっている 魚もうつ病になる
生物の進化の過程で最初に脳を持ったのは魚。魚が外敵を察知すると扁桃体が活動します。そして、ストレスホルモンが分泌されて、全身の筋肉が活性化します。魚はこの仕組みで運動能力を高めて素早く逃げます。危険が遠ざかればストレスホルモンが減少します
魚もストレスが続くと、ストレスホルモンの分泌が止まらなくなり、うつ病になる
人間でも、ストレスホルモンの量が高い状態が長く続くと、脳に異変が起きます
脳の神経細胞がダメージを受ける
孤独
チンパンジーもうつ病になる。チンパンジーは高度な集団社会を築いている。集団社会を形成する目的は助け合いや支え合う、安全です
孤独な場合、ストレスホルモンが高いことがわかっている。高度な集団社会を作った生物では孤独が原因になっている
孤独になったチンパンジーは、ストレスホルモンの値が高くなる。 高度な集団社会を作ったために、孤独になると不安や恐怖が生まれ、扁桃体が激しく活動する
記憶
人類の祖先はアフリカのサバンナで暮らしていました。常に猛獣に襲われる危険がありました。危険な体験をしたり、仲間が殺されたりする体験から同じ出来事を避けるためには、そのときのことを記憶する必要があります
身を守るために記憶します。その一方で
恐怖などの記憶は、繰り返し思い出すことで、扁桃体を激しく活動させます。 これでストレスホルモンが分泌され、うつ病になってしまう
過酷な状況で生き延びるためのメカニズムが、比較的安心して暮らせる現代の人類を苦しませる結果になっている
言葉
人類は進化の過程で言葉を手に入れました。言葉によって、他者の体験を自分の体験のように取り入れられるようになり、他者の恐怖体験も扁桃体を活動させるようになりました
他の人から恐怖の体験を聞くだけで、脳に強く記憶される。 他者の体験を伝え聞いただけでも、扁桃体は活動する
うつ病と無縁の人々 狩猟採集の人々の暮らし
研究者たちがタンザニアのハッザの人たちに、うつ状態の聞き取り調査を行いました
みなが結束しているので、天敵から身を守ることができる。 助け合って生活しているので、孤独にもならない。 また、そんな生活では、嫌な記憶も癒される。
うつにはなりにくいが、先進国の人々と比べると、たいへん過酷な生活である
現代人は、狩猟採集生活にもどることはできないが、良いところだけを取り入れることは、できると思います
狩猟採集の人々の暮らしがうつ病と無縁の理由
平等に近い生活
ハッザの人たちは狩りをして食料を得ています。狩りを成功させるには集団の結束が求められます。そのためには、平等でなければなりません。平等に近い暮らしぶりが、現代社会の人々が持つ悩みから解放している
過酷な狩猟生活をしていた頃は、みんなで協力して捕った獲物を、みんなで分け合っていました
平等には、ストレスホルモンを抑える、うつ病を抑える効果がある
お金を分け合う実験
平等と扁桃体の関係を探る実験
自分と相手にお金を分けます。そのときの扁桃体の活動を調べます
- 自分が損をするように分ける
- 公平に分ける
- 自分が得をするように分ける
自分が損をするとき、扁桃体の活動(ストレス)は大きくなります
また、自分が得をするときにも扁桃体の活動(ストレス)は大きい
互いに公平な場合だけ、ほとんど反応しない
このことから、平等はうつ病の原因となる扁桃体を活動させないことが分かる
文明の発展により平等が崩れた
狩猟採集社会では集団の結束が必要でした。結束のために食料を分け合うなど平等が保たれていました。その平等がうつ病を防いてくれました。
狩猟採集社会から農業を中心とした生活へと、社会は大転換しました。生産量が飛躍的に向上して、余った穀物を蓄えられるようになりました。獲物を平等に分ける社会から、穀物を階級に応じて分けられる社会になり、平等な社会が崩れました。貧富の差や争いが生まれ、嫌な記憶や孤立が広まっていきました
平等が崩れ去ったことで、ストレスが増加しました
現代では、職業の違いが、うつ病の発症に影響する、
専門的な職業や技能職(自分で判断する)では、うつ病という点では少ない
上司からの命令で動く営業や非・技能職ではうつ病が2倍以上も多い
立場の低い人が常にストレスにさらされている
病気になったときや慢性疾患になった時も大きなストレスとなり、同じようなメカニズムで、恐怖や不安、悲しみなどの感情 から扁桃体が暴走することがあります。
うつ病や心の病が合併しないように、鍼灸治療で予防・ケアーをしていけると思います